簡単ツールでスキルアップ

 ヒアリングを徹底するといった、丁寧な営業を誰でも簡単にできるようにすることも経営者の役目です。営業担当者により商談の進め方には巧拙があるので、優秀な営業担当者のやり方を共有できる販促ツールを用意するのです。週に1回は営業担当者が内勤する日を決めて、顧客のことを下調べしてツールを準備する時間を設けるとよいでしょう。

 このとき、販促ツールを営業担当者一人ひとりが作るように指示しても、実際に作ってくれるのは一部の社員だけということになりかねません。専任の担当者を決め、組織としてツールを用意する仕組みをつくれば、全員が共通のツールで営業できるようになります。

 営業担当者の中からツール作りなどの販売支援をする専任の担当者を選ぶ場合は、最も優秀な人を配置すると効果的です。指名した人がこうした仕事を嫌うようなら、「営業戦略室長」などのポジションを与えて待遇も見直せば、きっと理解してくれるはずです。

 営業成績を伸ばすためのもう一つの視点として、自社の強みに注力することがあります。しかし、自社の強みは何かを要素分解して考え、その本質を理解している経営者はめったにいません。

自社の強みを社長は本当に理解しているか?
自社の強みを社長は本当に理解しているか?
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 「うちはスピード対応が強み」という経営者の声をよく伺います。しかし、インターネットで簡単に検索ができる今、製品の仕様などは詳細に調べられます。いったい、どんな点のスピードが評価されているのでしょうか。

 ある会社では、技術部門の回答の早さが評価されていると分かりました。そこで、営業に常に技術部門を同行させたり、案件によっては工場長を同行させたりしてさらに強みを発揮できるようにしました。工場長が「新規設備を導入して対応可能です」などと即答すればスピード回答の評価はもっと高まるでしょう。

 別のメーカーでは、技術レポートのレベルの高さが会社の評価につながっていました。年商10億円ほどの会社ですが、レポートの内容が評価され、1億円ものの新規受注獲得に成功しています。大手企業も技術力のある新しい会社を常に探していますから、レポートの内容を濃くすることが新規受注に結びつくのです。
 レポートが自社のアピールになると分かったこのメーカーでは、レポートの作成枚数をKPI(重要業績評価指標)に定めました。経営者が「技術レポートをどんどん作れ」と奨励し、それとともに会社の技術力が認知されて受注が増えるという好循環を実現しています。

 ここまで説明した内容を見て、「事前準備はうちでもできている」「KPIは導入済みだ」などと思われた経営者の方も多いでしょう。

 しかし、私が数々の企業を指導した経験からすると、多くの経営者は「KPIが有効」などという話を聞きかじって、導入したつもりになっているのです。「営業の訪問回数をKPIにする」という話がよくありますが、訪問回数は業績アップに直結する指標ではありません。自社の本当の強みはどこなのかを理解し、前出のメーカーのようなレポートの作成枚数のように本当の強みと直結する指標をKPIに定めるのが正しいやり方です。

 現在取り組んでいる営業活動について、その本質を捉えた実行策になっているか、改めて社内を点検してはいかがでしょうか。営業を効率的にすることは、社員の労働時間短縮にもつながるはずです。

(この記事は日経BP社『日経トップリーダー』2016年11月号を再編集しました。編集:日経トップリーダー

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