では、こういった市場へ参入すること自体に問題があるのでしょうか。答えは否で、要は市場内においてどのように差異化を進め、自社の強みを生かしたオンリーワンの製品を作り出すかが大切なのです。そのためには、ポジショニングの考え方が重要になります。

 差異化と言うとすぐに「一番いいモノをつくれば差異化できる」と考えがちですが、問題は、何をもって一番いいモノとするかです。それ自体が持っている性能をナンバーワンにすることもできるでしょう。サイズを世界最小にすることも、価格を最も安くすることも一番いいモノと定義できるでしょう。実は「一番いいモノ」は無数にあり、どの要素が受けるか(ニーズが高いか)は、その時代ごとに変わっていきます。

 つまり、トレンドの影響を多分に受けるのです。このあたりのカラクリを富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」を事例に述べていきます。

富士フイルムの大ヒット商品「チェキ」。その復活の裏では、写真を巡る大きなトレンドの変化が起きていた
富士フイルムの大ヒット商品「チェキ」。その復活の裏では、写真を巡る大きなトレンドの変化が起きていた

「チェキ」のヒットはSNSトレンドの後押し

 チェキの発売は1990年代までさかのぼります。発売当初はヒットしましたが、2000年代前半のデジタルカメラの波に押されて販売が低迷しました。ところが、韓国のTVドラマで小道具として使用されたことなどがきっかけとなり、アジア圏を中心に再びブレークし、現在では累計500万台を販売する大ヒット商品となっています。

 インスタントカメラとは、その名の通り、撮影するとすぐに写真が出てくるカメラです。ポラロイドが有名でしたが、こちらもデジカメの波に押され、ついには市場から撤退しました。そんな中、チェキだけが市場に残り、結果として再びブレークしたのです。この要因は単に、韓国のTVドラマで取り上げられたことだけなのでしょうか。実は、そこには大きなトレンドの後押しがあったのです。

 下図は「チェキ」のポジショニングマップです。縦軸は「即時性」に、横軸は「コミュニケーション性」に置いてみました。

すぐ見られる「即時性」とすぐ仲間とシェアできる「コミュニケーション性」で判断すると、スマホとチェキは同じグループになる
すぐ見られる「即時性」とすぐ仲間とシェアできる「コミュニケーション性」で判断すると、スマホとチェキは同じグループになる

 即時性とは、撮影した画像をすぐに見られるかどうかという点です。上半分が素早く見られるゾーンで、下半分がすぐには見られない(遅い)ゾーンになります。
 昔のフィルムを使ったカメラは、撮影した画像をすぐに見ることができません。従って、マップの下半分に属します。一方、チェキやデジタルカメラ、スマホは、撮影後すぐに見ることができるため、上半分に属します。前述しましたように、昨今の「デジタルトレンド」によりニーズが上半分に移行し、フィルムカメラはそのポジションを失ってしまいました。  次に横軸のコミュニケーション性についてですが、これは、撮影した写真が簡単にコミュニケーションに使えるか、という点に注目しました。右側の半分は素早くコミュニケーションできるゾーンで、左側はコミュニケーションするのに手間がかかる(遅い)ゾーンです。

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