ボクは初めて担当するお客さまには必ずこう言います。

 「はじめまして。今日から担当させていただきます、久保と申します」「今日から責任を持って最高のヘアスタイルを共につくっていきますので、最低でも数年のお付き合いをよろしくお願いします」

 普通の美容室なら「また来てくださいね」だと思いますが、ボクはお客さまをずっときれいにしていきたいという気持ちで接しています。お客さまは「こちらこそ、末永くよろしくお願いします」みたいな反応になる人が多いですね。

子供や孫ができるまでお付き合いを続ける

 実際、ボクは23歳で独立していますから、当時高校2年生のお客さまならボクより7つぐらい年下で、そんなに世代が違いません。年齢が近いから、お客さまも「お兄ちゃん」とか「店長」とか今でもボクのことをそう呼びます。

 2年もすれば「来年成人式なので、成人式は店長がしてね」という話になる。それから何年かして「店長、好きな人ができて結婚するんだ」と打ち明けてくれる。それで「他の人に髪を触られるのは嫌だから結婚式のときに来て」と言われて、ウェディングの髪を整えてあげます。

 さらに何年かたったら「子供ができたので、自分の赤ちゃんの髪の毛で筆を作って」と、業者に頼んで筆を作ってあげる。そのうち、その子供がどんどん大きくなって「なんと私の娘は成人式よ」と言うから、2人で「ボクらも年取ったな」と笑い合う。そして孫ができておばあちゃんになったというお客さまが、ボクには何百人もいます。

 あるお客さまは、初めて来ていただいたときはボクより年上で40歳ぐらいでした。結局、三十何年来ていただいていたのですが、悲しくも、亡くなってしまいました。

 ボクは泣きました。創業して間もないころ、何も分からないときに、そのお客さまがお店に来るたびに、ボクの子供にお菓子を持ってきてくれたり、公園に連れて行ってくれたりした方でした。

 そういう人たちとお付き合いした何十年もの月日がボクの財産です。いい会社というのはお客さまとそういう関係が築けるものじゃないでしょうか。

 ライフ・タイム・バリューというのはお金だけのことじゃない。その人がいいときも悪いときも、お客さまと長く付き合ってきた時間の価値なんです。

(この記事は日経BP社『経営者には、幸せにするべき5人の人がいる』を基に再編集しました。構成:菅野 武 編集:日経トップリーダー

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