世の中で「従業員満足」とか「家族主義経営」を掲げている会社は多いと思いますが、それでも、業績が悪いとか、ミスを犯してしまったというときなどに、ペナルティーを科して管理しようというケースは多いのではないでしょうか。

 それは、本当の意味での従業員満足になっていないのではないかと思います。

 先日、友人のドクターから相談を受けました。

 ある患者さんが治療費を「次にまとめて払うから」などといいように言っていて、結局、最終日になって来なくなって、何十万円かの医療費を踏み倒されたという話です。

 ドクターはその危険があることを繰り返し言っていたので、「責任感も持ってほしいから、被害に遭った金額を看護師などのスタッフに少しずつ負担させたい」と言うんですね。

 でも、ボクはそれはおかしいと思いました。

 それよりも「『これだけ損をしたけどその分いい勉強になった。今後どうしたらいいかを話し合おう』とドクターから言ったらいい。きっとスタッフの団結力が強くなり、頑張ってくれると思いますよ」と伝えました。

 1週間後に電話がかかってきて「久保さんの言った通りにしたら、医院がすごくいい雰囲気になりました」と言う。担当した看護師は泣いて「もっと患者さんにたくさん来てもらえる、いい病院にしていこうね」と他のスタッフとともに、ものすごく盛り上がったということです。

 失敗を許し合える関係をつくる。「失敗してもクビにならない、自分たちを守ってくれる」と社員が感じる。こういう会社に対しては働く人の忠誠心や、信頼が強くなると思います。

 失敗や不適切な行動を、いくらやってもいいと言っているわけではありません。一生懸命やっての失敗や行動には、ペナルティーを与えるのではなく、共にできるようになるまで待つということです。

切り捨てる姿を、ほかのみんなが見ている

 普通の経営者はできのいい人、成績のいい人を集めて組織をつくりたいと思うのではないでしょうか。ボクは逆です。仮に、ダメな社員がいるとして、1つにはそんなダメな社員でも一人前にできたら、どんな人でも教育できると思っていることもあります。

 でも、もっと大きいのは、そのダメな人を助けようとしている、応援しようとしているボクの姿、つまり経営者の後ろ姿をほかの社員が見ているからです。

 普通の企業なら業績の悪い人は左遷されるかもしれません。すると、それを残りの人たちが見ているわけじゃないですか。「うわー、見てみろ。ダメになるとあんなふうに切り捨てられるんだぞ」と。そうすると、みんな顔では笑っていても、心では会社のことを信用できなくなります。

 一時的に生産性から遠ざかることになるかもしれませんが、どんな人でも大事にすることが強い組織をつくり、結局は生産性も高くなるのではないでしょうか。

 ボクは「この子をこうしたら、周囲はどう思うかな」と考えます。その対処で周りがどんな気持ちになるかを深く考えるリーダーシップこそ、いい組織をつくると考えています。

(この記事は日経BP社『経営者には、幸せにするべき5人の人がいる』を基に再編集しました。構成:菅野 武 編集:日経トップリーダー

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