最後に、経営者が幸せにするべき人の5人目として「家族」の話を少しだけしたいと思います。

 昔から「夫婦円満なら、商売繁盛」などと言いますが、自分の家族ですら幸せにできない人が、お客さまを幸せにすることなんてできないと思います。すべての基本は家族を大切にすること、これにつきます。

 ボクの会社の入社式では、新入社員のお父さん、お母さんに事前にお願いして、20年間、お子さんを育てた思いを手紙にしてもらいます。その手紙を、入社式でみんなの前で読み上げます。

 当たり前のように親がいると、そのありがたさを忘れてしまいがちになります。お客さまも同じ。「来てもらうのが当たり前」と思ったら客商売はおしまいです。当たり前に存在する親のありがたさ。それをきちんと知り、感謝することから、お客さまをもてなす心も育っていくと考えています。

経営者にとっての「家族を大切にする」ということ

 ちなみに経営者の中には、奥さんや子供のために時間をとったり、社内にいる家族に高い給料を払ったりすることが彼らを大切にすることと思っている人がたまにいます。家族を幸せにするのは大切ですが、このように、過度になってはよくありません。

 家族を大切にしている経営者というのは、同族が大切、つまり他人から見ると利己主義としか見えません。そこは、経営者としてよくよく注意しなければならないところです。

 ボクの息子と娘が会社にいますが、給料は最低限しか払っていません。「社長の子供なんだから、いい給料をもらったり、いいクルマに乗ったりしていたら、誰もついてこなくなるよ」と言っています。ただ、ボクは普段はほとんど家族と一緒にいないので、1年に数回は必ず、家族で一緒に旅行に行くと決めています。もちろん、その日程には、何があっても絶対にほかの仕事は入れません。

 さて、「働く仲間」「お客さま」「かかわりのある業者さん」「地域の人々」「家族」。本連載では経営者が幸せにするべき、5人の人を紹介しました。人を幸せにする、喜ばせるということは、自分を喜ばせることでもあるんです。人の喜びの中にしか幸せはないと言いますか、自分たちの繁栄はないと言えます。

 ここまで、様々なことを書いてきましたが、周囲の人を「喜ばせたい」「幸せにしたい」という気持ちが大きい情熱になっているかどうか、それが経営者にとって一番大切なことだと思っています。

(この連載は今回で終了します。また、この記事は日経BP社『経営者には、幸せにするべき5人の人がいる』を再編集しました。構成:菅野 武 編集:日経トップリーダー

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