『ブラック・ジャック』は、連載開始が、手塚さんの漫画家生活30周年という節目に当たったこともあり、スター・システムの「オールスター出演」が、コンセプトになっています。
だから、脇役の中に、『リボンの騎士』のサファイアにそっくりの女性が出てきたり、「これはどう見てもアトムだろう」という少年が出てきたりする。これも往年の読者を沸かせ、ファンの心をガっとつかんだポイントでした。
自分の強みを生かしつつ、異業種に学び、常にチャレンジ。そしてイノベーションを起こしてきたのですね。
縦スクロールと「ガラパゴス化」
日本の漫画業界は今、ガラパゴス化していると言われています。
スマホと相性のいい「縦スクロール漫画」が、現在、東アジア中心に新しいデファクト・スタンダードになりつつあります。
けれど、縦スクロール漫画に積極的に投資するところとなると、韓国などの資本が目立ち、日本は及び腰です。
なぜかといえば、日本では今も、紙の単行本が大きな収益源としてあるからでしょう。
デジタル事業の常でしょうが、縦スクロール漫画は、マネタイズが難しいんですね。無料で読めるコンテンツが豊富にあるから、課金しにくい。
しかも、紙の単行本で発展した日本の漫画は、見開き2ページを基本単位につくられていて、縦スクロールと相性が悪い。見開きにバーンと大きなコマが入るとか、絵のサイズにメリハリがあるのが魅力なんだけど、その面白さが縦スクロールでは生きにくい。紙からデジタルへの転換が、仕様の問題から難しい。
そんな事情から、縦スクロールに力を入れる出版社さん、編集者さんは少ないし、そのためにノウハウが蓄積されない。
とはいえ……。
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