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「オール短編読み切り」がすごい、とは、どういうことでしょう?

 濃厚なヒューマンドラマを展開するなら、かなりのページ数が必要、というのが描き手の感覚です。
 ギャグ漫画ならさておき、特に『ブラック・ジャック』は、かなり難しいテーマばかりを取り上げていますから。

 ところが『ブラック・ジャック』は、基本的に1話二十数ページほどと短く、1話完結。たまに増ページはあっても、全242話のうち、前後編に分かれる物語すら1つもない。

 だからこそ、前回、お話しした「どこから読んでも面白い」というヒット漫画の条件を、見事に満たしているわけです。

これで2ページ使って大丈夫?

 しかも、見てください。この第1話の最初の見開き。

『ブラック・ジャック』第1話、最初の見開き。この2ページから読み取れる「手塚漫画の凄さ」を熱く語った(写真:行友重治)

 のっけから、大胆に大きなコマを使っています。

 この見開きが伝える情報は、「クルマが暴走して事故が起きる」。
 それだけなら、2つ目と3つ目のコマ、クルマがカーブするシーンはなくてもいいはず。
 それをあえて入れることでカッコいい絵に仕上がり、序盤のツカミとして効いています。

 けれど、描き手として見ると、「おいおい、大丈夫か!?」と心配になってしまいます。
 だって、これだけでもう2ページも使ってしまっているんですよ。全23ページだから、実に8%以上。
「23ページしかないのに、これだけで2ページも使っちゃったら、後が押せ押せになって、どこかがおかしくなっちゃうよ」と。

 ところが、そうならない。

 これが「お話をつくる人」としての手塚さんのすごさで……。