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 漫画家の田中圭一さんに、「ブラック・ジャックに学ぶ仕事論」を尋ねるシリーズ連載。

 バブル世代がSNSで仕事論を語ると、なぜ炎上するのか――。転職も重ねた三十余年のサラリーマン兼業漫画家としての経験から考える。

 バブル世代と今の若者とでは、前提となる外部環境があまりに違う。とはいえ、仕事をすれば、誰でも「神経にチクチクくる人間関係の痛み」を覚えるのは、いつの時代も同じ。そこで生じるゴタゴタを、どうさばいていけばいいのか。

 手塚治虫の生誕90周年の節目に上梓された『もしブラック・ジャックが仕事の悩みに答えたら』(尾﨑健一著・手塚プロダクション協力)とのコラボ企画。

漫画家のようにフリーランスで働いていると、知らず知らずのうちに流され、不利な状況に追い込まれることがよくある、と前回、うかがいました。

 ええ。例えば、こういうことがよく起きるんです。

 ある漫画家さんを最初に拾い上げ、育てたのがA社で、最初のヒット作はA社から出た。けれど最近、その漫画家さんの人気は陰り、今現在A社にもらっている仕事はない。

 それでも、漫画家さんは「次のヒットもA社から出し、恩返ししよう!」と考えるもの。その意気込みは尊いですが、そのときにA社のライバルのB社から声がかかっても、「ここでB社の話に乗るのは裏切りだ」と感じてためらい、身動きが取れなくなってしまう。

 

 そういう人が結構いるんです。僕らの世代ではメチャメチャ多いと思います。

 それはそれで一つの考えだし、一つの正解なんだと思うんです。

 けれど……。

田中さんは1962年生まれ。近畿大学在学中に漫画家デビューし、卒業後は玩具メーカーのタカラ(現・タカラトミー)勤務を振り出しに30年以上、会社員兼業の漫画家を続けてきた。その間に「売れた絶頂から、売れないどん底への転落を2回経験」。現在は京都精華大学マンガ学部で教壇にも立つ(写真:行友重治)