政府が新しい産業を創ろうと若い人たちに向けて市場創出の政策や場を演出し、若い人たちがそれらに呼応する。また、既に成功を手中にした企業経営者や起業家たちがエンジェルという形でシードの資金を提供し、大学や政府、民間企業が積極的にスタートアップを育成しようとインキュベーションやアクセラレーションプログラムを運営し、その後のファイナンスの選択肢も増加している。さらに、数が増えれば成功事例も増える。身近にそんな例を見て、自分もやってやる、という環境ができつつあるわけだ。

 こういったスタートアップは、技術力をベースにインド市場に限らず世界各国の市場に向けたサービス展開をする企業もあれば、自国の社会課題解決を目的にしたサービスを提供する企業もある。国内外を狙った双方の展開ができるのだ。

大事なのは「時の流れに乗る」「仲間づくり」

 弊社は昨年、孫泰蔵氏がファウンダーを務める「Mistletoe」と、インドの独立系アクセラレーターのGSFとで、「Gastrotope」という会社を立ち上げた。インド発で世界に名だたるFarm to Fork(農場から食卓まで)のエコシステムを創ろうという野心的な試みだ。この1年、この活動に多くの時間を割いてきて、いろいろと気づくことも多かった。

 その一つは「時の流れに乗ること」。これはインドでも他の国でも変わらない。インドは世界有数の農業大国である一方で、農業から食品加工、そして消費者に届けられるまでのサプライチェーンに至るまで課題乱立である。逆に言えば課題しかないといってもいいのかもしれない。それらの課題を、テクノロジーを活用して単なるホップ・ステップ・ジャンプの線形的な発展ではなく、「おお!」というリープフロッグなイノベーションをもたらすことを考えている。Agritech、Foodtechは徐々に注目が集まり、投資も集まってきている分野である。

 昨年2017年9月に法人を設立し、元々南部アンドラ・プラデシュ州の州首相がAgritechアクセラレーションプログラムを熱望しているとの話をキャッチするとともに、11月に州政府がビルゲイツファンデーションとともにAgritechサミットを開催、そこでMoUを締結、とパーツがばしっとはまった時のインドの驚くべきスピード感での契約締結に至ったわけだ。もちろんこの契約締結の背景には何度もブチ切れそうになったり、色々あったわけだが、まあ今となってはいい思い出ということにしておこう。

 そして次に思うのはどのように「仲間づくり」をしていくかという話だ。誰もがやったことのないチャレンジでもあり、サービスや製品もインドでは物珍しいモノが多かったりもする。そして新しいチャレンジを進める中では需要サイドをどうつくるかということも重要なことでもあり、色々な人たちを巻き込み、お互いに気づきを得ながら展開の方向性を見据えていく必要がある。

アンドラ・プラデシュ(AP)州で開催されたAgritechのイベント
アンドラ・プラデシュ(AP)州で開催されたAgritechのイベント

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