2017年に発表された「スタートアップ・エコシステム・ランキング」では、バンガロールが20位にランキングされている。アジアの都市でトップ20位の中に入ったのは、北京、上海、シンガポールのみ。日本の都市はない。

 インド政府は「スタートアップ・インディア」という政策を掲げて、積極的にスタートアップの育成を推進している。州政府も各地での草の根活動を学校や地場の法人などと連携した育成プログラムを展開している。毎年2000万人の子供が生まれるインド。既存産業だけで雇用を確保することは難しく、できる人たちは自分たちでどんどん起業して稼げ、というメッセージなんじゃないかと感じている。

 様々な分野でのチャレンジの結果、ユニコーン(10億ドル以上の企業価値が見込まれる未上場の新興企業)も増えている。世界でユニコーン企業といわれる企業は200社を超えるといわれるが、インドのユニコーン社数は14社に上るという。FlipkartなどのEC(電子商取引)、QRコード決済のPaytm、メッセンジャーのHIKE、Uberのインド版ともいわれるOla、フードデリバリーのSwiggyやレストラン評価のZomatoなど。これらの企業を見ていると、インドだからこそ現れた、というプレーヤーは実は少なかったりもする。

スタートアップ育成に躍起な地方政府

 世界のどこかでちょっとうまくいったモデルがあれば、それをインド市場にアダプトさせようという動きがインド国内あちらこちらで起きているのだ。インドの起業家がどれだけアグレッシブだといっても、さすがにインド全土を一気に手に入れられない。まずはニーズがあるところからスタートするわけだが、世界のどこかでうまくいったビジネスモデルがインドの大都市圏で成功をおさめ、それが地方都市にも波及していく。逆に地方都市でうまくいったモデルが大都市でも展開されることもある。そして、それらがM&Aなどを通じてインド全土を押さえていき、巨大なプレーヤーになっていく。そんなパターンが今後はどんどん増えてくるとみている。

 特に、今は地方政府が躍起になってスタートアップの育成を目指している。各地でインキュベーションプログラムやアクセラレーションプログラムが提供され、より多くの人たちが新しいモデルにチャレンジしていく裾野が形成されつつある。

 PE (Private Equity)とVC(Venture Capital)の投資額も増えてきている。インド国内のVCもいるし、世界の主要VCもインド市場に着目している。シリーズB(企業の成長段階に応じた投資ラウンドの1つ)以降の大型調達には、ソフトバンクやアリババなど世界的な企業による大型投資が行われるし、アメリカやヨーロッパからの資金も順調にインド国内に流れてきている。さらに、元CXOやある一定の成功を収めた起業家たちがエンジェルとなり次の若手経営者の育成に立ち上がっている。

 著名大学の学生の進路も大手企業への就職だけでなく、スタートアップへの就職や起業家になるという選択肢も出てきている。先日とあるAI(人工知能)スタートアップの創業社長と話をしていたのだが、彼らはIITデリー(インド工科大学デリー校)の卒業生で構成されたチームだった。ドローンビジネスにチャンスありということで起業を目論んだが事業化のハードルが高く、逆にドローンを使うことで得られるデータ分析という視点から人工知能ベンチャーへ鞍替えしたというチーム。彼らは卒業する段階から企業に就職する意思はなかったという。

 彼らによれば、かつては世界の流れが数年遅れでインドのような新興国に入ってきていたが、今や世界の流れがほぼ同時期にインドにも流入しているのだという。さらに、彼らの卒業生ネットワーク、投資家のネットワークを介していけば海外市場に打って出ることも決して難しいことではないという。さらにインドのエンジニアにとって世界の新しい技術をキャッチアップすることはさほど難しいことではない。インドの理系学生にとって英語と数学は特に高いハードルではないのだ。やる気とチャンスさえあれば新しいことへ取り組むことには難しさを感じない、と。風は俺たちに吹いていると鼻息荒く語る彼らを見ていると、インドのエンジニアが世界を席巻する理由もよくわかるような気がする。

州政府のインキュベーションセンターのビル。Nasscomや民間企業が運営するインキュベーションオフィスやアクセラレーターの共同オフィスが入る(アンドラ・プラデシュ州)
州政府のインキュベーションセンターのビル。Nasscomや民間企業が運営するインキュベーションオフィスやアクセラレーターの共同オフィスが入る(アンドラ・プラデシュ州)

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