個人的な趣味でインドのワイナリーを何軒か巡ったことがある。欧州やニューヨークにワインを輸出している、あるブティックワイナリーで働く若手醸造家は、まずインドでバイオテクノロジーを勉強し、そこからワインの醸造の勉強をするためにフランスやイタリアに行ったという。 ワインの醸造技術を学ぶよりも、バイオテクノロジーを極めて製薬や医療業界に行くほうがよほど年収は得られると思うが、彼に言わせると、やりたいのはワイン作りを極めることであって、カネではない。

 こういったワイナリーは都市部に直結しているわけではなく、大都市からヘタをすれば車で5時間6時間かかるそんな辺鄙なところにある。もちろん娯楽施設が近くにあるわけでもないし、インターネットやテレビといった情報アクセスも都会と比べればやはり劣る。しかしながら、彼らにとっては、カネでも娯楽でもなく自分のやりたいことを極めることが大事なんだという。

 昔以上にこういったやりがい重視の若者たちが増えていることは会話の端々で感じている。 かつては大学を出て数年働き、20代後半ともなれば結婚して、女性であれば家庭に入るというステレオタイプなインドのライフスタイルがあったが、最近の若い男女は必ずしもこういった従来型の価値観に賛成していない。

 彼らがしばしば口にするのは、「世界の若い人たちは自分たちのやりたいことを追求して自由に生きているのに、インドにいる我々が社会にとらわれるのはどうかと思う」というものだ。

 かつてはこういった価値観に触れられるのは都市部のアッパー層だけであったのが、ネットを通じて世界の価値観へとつながる人たちも増え、また、価値観のみならずネットサービスの登場により世界中で起きているようなシェアリングやオンラインを使った消費行動の変化というのがまさに今のインドの中心部に起きてきているのだ。

 あと数年も経てば、日本以上に世界の主要都市と同じようなライフスタイルを楽しむ人たちがこの国にはあふれかえるんだろうと思う。