これだけ家の中で引き籠もっていても外出しているのと同じような生活ができるのであれば、あえて外出しようとする時には何がしかの目的も大事になってくる。

 最近の若い人たちの話を聞いていると、わざわざ外出するのは、誕生日であったりデートであったり、友達と遊びに行くとか、なにがしかの目的があることの方が多い。いわば「ハレの日消費」というような価値が出てきているのではないかと感じている。昔は、特に用事がなかったとしても土日になればモールに行って映画を見てウィンドウショッピングをする、という時間の過ごし方をしている人たちも多かったが、最近ではそれが変わってきているように感じる。

 さらに平日の夜や土日などに行くようなレストランはどんどん値段が上がっている。 日本では数千円もあれば、居酒屋でみんなでワイワイ楽しめたが、インドでは同じようにお酒を飲んで楽しもうと思ったら1人5000円、1万円が飛んでいくのは当たり前だ。お酒を飲まなかったとしても2人で3000円のレストランは都市部のいいレストランでは当たり前の価格水準なのだ。スタバなどのカフェも日本より高い。10年程前はイケてるカフェに入ってもコーヒー1杯20ルピー(1ルピー≒1.6円)だったが、今となってはその10倍だ。

 それだけ高ければそうそう席も埋まらないだろうと思っていると、大いにあてが外れる。この前もクライアントと一緒にパブに行ったのだが、17時18時ぐらいから人が入り、サッカーを見ながらビールを飲む若い人たちでフロアは埋め尽くされていた。

「カネ」よりも「やりがい」がインドにも

仕事終わりにバーで一杯(インド中部の州都ハイデラバードで)

 インドの一番の盛り上がるディナータイムである21時以降ともなると、人気のレストランでは予約がなければ入れなかったりもする。かといって所得が急激に倍になったという話はなかなかないので、そこからするとお金の使い方がデジタル化によって変わってきている、というような気にもなっている。

 こういったハイエンドの消費をできる人たちが増えているというのは事実であるし、こういった人たちが新しい価値を求めているというのも事実だ。インドの人たちは保守的な側面がありつつも、試してみてこれがいいという話になればそれらを使っていくという合理的な側面もある。日本人の一つの強みは、様々な消費スタイルや価値を実際に経験していること。これらの多様な経験をインドの人たちと共有していくというところに一つの商機を見いだすこともできるのでは、と思う。半径5キロの幸せを作るようなビジネスがあちこちで起きてくるのも不思議ではない。

 さらに、こんなところに集う若い人たちの価値観も徐々に変わってきている。昔は「何が何でもおカネを稼ぐ」という気概がある人たちが多かったが、最近の若い人たちに聞くと必ずしもカネではない。「カネよりもやりがいが欲しい」と、そんなことを言う若者たちが増えてきているのだ。

 そういった意味では日本企業も、給与や待遇といったものだけでなく、若い人たちが働きやすい、または若い人たちが将来に向けたベネフィットを感じるようなプログラムを提供することで人材獲得競争に勝てるのかもしれない。もちろん必ずしもやりがいだけで終身雇用的に惹きつけられるわけではないのだが、人生のある一定期間をうちの会社で過ごしてもらう、という選択肢は十分に作れるんじゃないかと思う。