このきっかけを作ったのは2016年の終わり頃に登場した「Reliance Jio」という新しい携帯キャリアだ。 Jioは「無料でインターネット通信ができる」ということを売り文句にし、一気にインド全土を席巻した。無料という言葉に弱いインドの人たちは、都市部から田舎まで一気にこの無料に飛びつき、あっという間にインターネット通信の裾野が広がり、情報へのアクセスが急速に拡大したのだ。

 Jioの影響で、今まではデジタル通信にはあまり興味を示さなかったような都市部の家庭の主婦や比較的所得水準の低いような人たちにも、一気にスマホが当たり前のツールとして行き渡るようになった。

「Jio」が仕掛けた「無料」のインパクト

 弊社がデリーで雇っている運転手は非常に保守的で、携帯電話は通話以外にほぼ使っていなかった。携帯でお金を受け取るとか送金するとか、そんなサービスは彼にとってははるか彼方遠い世界の話でしかなかった。

 しかしながら2016年半ばに突如インド政府が発表した高額紙幣の廃止に伴い、それまでは「騙されると怖いから」と言って使っていなかったデビットカードを使うようになり、 さらにJioの登場で周りの人たちがスマホを持ち始めると、その影響を受けてJioのシムカードを買い、いっぱしのスマホデビューをした。

 スマホには「ワッツアップ」「Facebook」 が入り、ほんの1年前までは通話しか利用していなかった電話というものが コミュニケーションツールとなり、さらにはお金のやり取りをするような、そんなツールにまでなってしまったのだ。

 実際のところ、このJioが与えた無料という言葉のインパクトは極めて大きかった。無料なのは最初だけで実際には課金がされるのだが、従来のデータ通信量の1/15という恐ろしいほどの価格破壊。結果的に競合他社も追随せざるを得ず、業界再編の大いなる波を引き起こすこととなった。

人口2万人の村にある「Jio」のショップ