実質的創業者として、定食・大戸屋を育て上げたカリスマ経営者、三森久実氏。「絶対不可能」と言われた食堂の多店化はなぜ成功したのか。
息子の智仁氏が父と過ごした日々を振り返り、経営者としての父・久実氏の実像を描く。
シリーズ
定食・大戸屋をつくった男とその家族

完結
4回
-
大皿料理店で失敗し5000万円がどぶに
養父の定食店を継いだ父は、客数を倍増させるほど店を繁盛させた。池袋、高田馬場、吉祥寺。3店を合わせた売上高は5億円にまで拡大。経営者人生は順調に進むかと思われたが、父はここで天狗になる。
-
池袋駅東口に「大戸屋食堂」が誕生
大戸屋は三森家が江戸時代に営業していた旅籠の名前である。筆者の父、三森久実の養父である栄一は、池袋駅東口の食堂で身を粉にして働き、後に自分の店を持った。屋号も新しく「大戸屋食堂」と付けた。1958年1月のことである。
-
「とにかく大戸屋をでかくしてくれ!」
それにしても、父はなぜ、命を削ってまで事業に向き合ったのだろうか。実は、父の遺品を整理していたときに、財布の中から一枚の写真を見つけた。小学生の頃の父と、実母が並んでいる写真だ。
-
父は死の2カ月前まで海外出張に出かけた
主治医は、私たちの前で「余命1カ月」と告げた。父が出張先のニューヨークから予定を繰り上げて帰国してすぐのことだ。父とは、大戸屋の実質的創業者の三森久実。「心配するな。俺の全部が、おまえの中に入るから」そう父は言った。
おすすめのシリーズ
-
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たや…
-
徹底予測2021年 底打ちか奈落か
日本経済の節目の年として幕を開けた2020年は、誰もが予想できない最悪の1年となった。すべての始まりはコロナ禍だ…
-
クルマ大転換 CASE時代の新秩序
総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
-
不屈の路程
話題の経営者や気鋭の起業家はいかにして自らの経営を確立するに至ったのか。そこにたどり着くまでの道のりは決して順風…
-
菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
-
1000年企業の肖像
日本は創業100年以上の企業が多くあり、世界一の長寿企業大国として知られる。その中には創業1000年を超えると伝…
-
10 Questions
いま、世の中で起こっていること。誰もが知りたいと思っていること。でも、ちゃんと理解できていないこと。漠然と知って…
-
河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは…
-
ファクトフルネス思考
「データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介した書籍『ファクトフルネス』は、日本で90万部を超えるベストセラーとな…
-
大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
日本の読者にとって欧州のニュースは遠い国々の出来事に映るかもしれない。しかし、少子高齢化や低成長に悩み、企業の新…
-
グルメサイトという幻
食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ──。外食店探しに欠かせない存在となったグルメサイトの地位が揺らいでいる…
-
フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
-
ファストリ、異次元の経営
コロナ禍の混乱からいち早く抜け出したファーストリテイリング。破綻が相次ぐアパレル業界にあって、なぜユニクロだけが…
-
テスラが仕掛ける電池戦争
日本でも2030年代半ばに新車販売でガソリン車をゼロにする方針が打ち出されるなど、各国の環境規制強化により普及段…
-
70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
全8回