サンジェイ:あまり知られていないのですが、例えばグーグルニュースをはじめとする多くのサービスはインド人技術者が開発しています。最近グーグルの責任者と話す機会がありましたが、バンガロールを単なるサポートセンターとしてではなく、新しい製品を作り出す非常に重要な位置付けの場所と見ているそうです。

 また、ウーバーを利用するとき、出発地と目的地を入力すると見積もり運賃が表示される機能もインドで生まれたイノベーションです。今では当たり前に使われている機能ですが、インドで誕生して一気に世界に広まりました。

サンジェイ・ナス氏。ブルーム・ベンチャーズの共同創業者で社外とのリレーションを担当する
サンジェイ・ナス氏。ブルーム・ベンチャーズの共同創業者で社外とのリレーションを担当する

西山:ここ数年間で世界中のテクノロジー企業がインドに開発拠点を設立しています。インドにはそれに対応できるほどの豊富な人材がいるということでしょうか。

サンジェイ:1990年代には、多くのインド人が大学で工学関連の学部を卒業した後に渡米して10年ほど滞在し、そのまま米国の市民権を得てインドには戻ってこないというケースが主流でした。

 しかし、今我々が目の当たりにしているのは、「逆頭脳流出」というべきものです。エンジニアリングやビジネスの学位を米国で取得したインド人たちが自国に戻ってきています。彼らがインドのイノベーションを支えているのです。

西山:日本は欧米や中国と比べてインドとの連携が遅れていると感じます。なぜ、欧米や中国はインドとの関係構築を積極化しているのでしょうか。

アシッシュ:我々のファンドは米国や中国の企業からも出資を受けています。また弊社のポートフォリオには、中国から資金を調達している企業が含まれ、今後もこの傾向は増加していくでしょう。

 米国と中国には巨大なスタートアップ企業を生み出してきた実績と自信があり、次なる主戦場インドにおいて非常に大きな機会が生まれると信じています。韓国は興味を持っているものの、その動きは米国、中国ほどではありません。

西山:米国と中国のインドへのアプローチ方法に違いはありますか?

サンジェイ:米国人は原則、こちらに足を運ぶことはありません。(VCの)セコイア、アクセルでも、インドのマネジャーを採用して「我々はインドに投資しており、インド市場を注目している」と言いながら、経営陣が飛行機に乗ってくることさえしていません。

 一方で、中国人は、インドに来て、オペレーションすることを恐れていません。これは、その他の国と大きく異なっている点ですね。彼らは、中国で成功している業界に非常に興味を持っており、「中国で有効なやり方を模倣してインドで成功しそうな会社に投資する」というアプローチを取っています。

何でも自社に持ち帰って判断する日本

西山:欧米の企業と日本の企業を比べると、ベンチャー企業の活用方法はどのように違うのでしょうか?

サンジェイ:多くの日本企業が世界中に進出しています。しかしインドで素晴らしいプロダクトを見つけても、東京に持ち帰って本社で検討し、日本の研究所などで活用方法の研究や技術実証を行うことが多い。決定までのプロセスに時間がかかり、多くの関係者を巻き込む中でスムーズに進まないことが多いという印象です。

 一方、ゼネラル・エレクトリック(GE)をはじめとする米国のグローバル企業は、そのままインドで活用することに積極的です。どうして日本企業は同様のアプローチを取らないのでしょうか。

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