
本連載の最後に、読者のみなさんにお願いがあります。
今回、書かせていただいた“株価騒動”では、あたかもB社の株のやり取りが不正であり、脱税をしているかのような印象を持ってしまった人もいるかもしれません。本当に、不正であり、脱税だとしたら、それは糾弾されるべきだと私も強く思います。「21」を管轄している税務官は「そのようなやり取りはみなし所得とみなす」とは言ってくれましたが、決してそれはB社個別のケースについて語ったものではありません。
上場企業のような公共性の高い存在に
もしかしたらB社では、私たちが知り得ない方法、それも法に則った方法で、巧みに株式を買い受けているのかもしれません。本音を言えば、その方法を私たちにも教えてほしいところですが、私がB社を訪れ、深々と頭を下げたところで、教えてはくれないでしょう。
だから、日本中の専門家の方々に問いかけたいのです。
支配株主が、社員株主(少数株主)を経由して、安値(額面に近い金額、配当還元方式の金額)で株を買い戻したとしても、みなし所得とみなされず、ほぼ無税でやり取りが可能な方法を知っている方がいたら、ぜひ「21」までご一報ください。お待ちしています。
それはさておき、「21」グループにも支配株主が存在する同族会社が加盟しています。今後はこうした会社でも支配株主が存在しない持株制を実施して、弊社と同様の「みんなで自治する会社」を目指していきたいと思います。
そもそも、上場企業の多くでは支配株主が存在しないため、社長が交代しても次の社長に対して多額の相続税がかかる株式の承継など起きません。株の所有と経営が分離され、公共性が高い存在になっていると言えます。 私たちのような中小企業も、そんな上場企業の高いモラルを見習い、私欲を抑え、顧客、取引先、社員に必要とされる公共性の高い存在になっていくことが大切なのだと、今は強く思います。
特定の誰かのための会社ではなく、公共性の高い存在になれば、将来に渡って事業承継もスムーズに行えるものと確信しています。
(この記事は日経BP社『無税相続で会社を引き継ぐ』を再編集しました。構成:菅野 武、編集:日経トップリーダー)

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