広島市を中心とする「21」のレギュラー店舗では、特定の誰かが株を51%以上所有することはなく、すなわち支配株主は存在しないので、額面譲渡でも問題はないと思われます。

 また、「21」にはフランチャイズなどで同族経営の店舗があります。これについても、差額が110万円にならなければ無税相続が可能であることも確認されました。会社の純資産が膨大になれば別ですが、ある程度の規模までは問題なく額面譲渡が可能だと思われます。

会社が「みんなのもの」である限り、無税相続が可能に

 これは今回の株価騒動によって、私たちが経験的に学んだことです。元来、日本の税制というのは「個人」には厳しく、「公共物」「共有物」については税制が緩やかになっています。同族会社、支配株主にとって「会社」は限りなく「個人の持ち物」であって、その持ち物の証明となる「株式」を譲渡すると、高額の贈与税、相続税がかかります。しかし、少数株主にとって「会社」は「個人の持ち物」ではなく、「みんなのもの」です。「みんなのもの」である限り、無税相続が可能になります。

 本来的に「21」は支配株主が存在しない「みんなのもの」であり、自治で運営している会社です。それは保有株式の比率を見ても明らかです。この理念と実態が損なわれない限り「21」の経営は無理なく、無税で引き継がれていくでしょう。

 逆に言えば、世の中の「事業承継に苦慮している多くの中小企業」というのは、それだけ個人所有の色合いが強いわけです。個人的な意見ではありますが、少なくとも現在の日本の制度の中で「本当の無税相続」を実現しようとするならば、やはり経営者やオーナーが会社が「自分の持ち物」という状態を捨て、「みんなの持ち物」に名実ともに変えていくことが必要なのではないかと、私自身は今回のてん末からあらためて感じました。

 「21」の次世代を担う人たちには、今回の裁判経緯を含め、「自分たちにとってよりよい事業承継とは?」という点についても考え、理解してほしいと思います。そして将来、日本の税制が抜本的に変わったときには、またみんなで知恵を出し、「21」にとって最も適した事業承継の形を模索してほしいと強く願っています。

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