「会社に利益を残さない」などのユニークな経営戦略を大転換し、後輩社員に会社の「地盤」「看板」「かばん」を承継すべく新たな施策を相次いで打っている、広島市のメガネ小売りチェーン「21」。創業者の平本清氏が、裁判所や税務署を舞台に繰り広げた“株価騒動”の最終回。会社を「自分の持ち物」から「みんなの持ち物」に変えられるかと、オーナー経営者に対し問いかける。

お世話になった先輩からの電話で始まった“株価騒動”。B社が、先輩の持っているB社の株式を安価で買い取りたいと言ってきたのに対して、私は「B社の純資産から考えれば、10倍以上の価値がある」と言って、裁判所で公正に価格を判断してもらおうと提案しました。
詳細は過去の記事を読んでいただくとして、裁判所の下した仲裁内容は、
B社 1万円株 = 39万円
Bチェーン 500円株 = 1万2000円
B社の純資産額から計算し、私たちが希望した金額よりは安値ですが、株主である先輩たちは「B社が株価を固定したり、安価での買い取りの強要をしていたことが不当だと証明できた」と喜んでくれました。一方のB社にとっても、当初言っていた額面価格に近い安値ではないものの、純資産価額方式の株価に比べれば3分の1以下で買い受けできたことになります。
税務署の判断は実際の売買価格との差110万円がカギ
それでも残った疑問を解決するため、私たちは税務署に乗り込みました。B社が過去に行っていたように、「社員株主を迂回すれば、(同族企業の支配株主であっても)安く株を買い受けられる」という方法自体が合法なのか、ということです。それについての税務署の判断の詳細は、前回、書きました。
その税務官とのやり取りではっきりしたことがいくつかあります。
(1)支配株主が自社株を買い受ける場合、純資産価額方式の価格と実際の売買価格の差が110万円を超えるとみなし所得とみなされる。
(少数株主の場合は、もともと配当還元方式での計算が可能なので、差額が110万円を超えることはまれである。よって、無税で売買、相続が可能と思われる)
(2)税理士、税務署によってこの判断が異なることはない。特区や企業に対する特別な優遇税制も存在しない。
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