税務官からその一言が聞けたので、「それならすぐに実行することはやめて、確実に問題ないと判断できるまで、この方式は実行しないことにします」と私は答えました。目の前の税務官が「みなし所得とみなします」(つまりは、差額は贈与税の対象になる)と断言しているのですから、そんな方法を「21」で採用するわけにはいきません。

税制特区や優遇措置は存在しない!
「それともう1つ、お聞きしたいことがあります」
そう私は言い置いて、次の質問を投げかけました。
「今回問題になっている株のやり取りについて、税理士の力量や税務官の考え方、あるいは税務署によって判断が変わるということはあり得ますか。もし税理士の手腕の問題なら『21』の税理士を替えますし、管轄する税務署によって判断が変わるというなら『21』の本社をB社と同じ管轄へと移転します。実際、そのようなことはあり得るのでしょうか?」
ついでにもう1つ。
「企業によって税制が優遇されるようなことはあり得ますか。たくさん税金を納めている企業は『株の譲渡の差額くらいは大目に見てくれる』というような優遇措置があるのでしょうか?」
私の問いかけに対して、税務官は「税理士や税務署によって判断が異なることはございませんし、優遇税制や特別対応が認められた特区のようなものもありません」ときっぱりと答えてくれました。
「それを聞いて安心しました。どうもありがとうございました」私たちは丁重にお礼を述べ、税務暑を後にしました。
株価騒動の第2ラウンド、税務署でのやり取りは以上です。連載最終回の次回は、裁判所と税務署で学んだことをまとめてみたいと思います。
(この記事は日経BP社『無税相続で会社を引き継ぐ』を再編集しました。構成:菅野 武、編集:日経トップリーダー)

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