私たちはB社との裁判資料を示しながら、株式売買の経緯を説明しました。

 さらに「B社では50年もの間、社員から自社株を額面に近い価格で買い戻しているが、問題ないのでしょうか」とも尋ねました。

「みなし所得」とみなす可能性がある?

 最初に説明しておかなければならないのですが、「21」の本社がある地域と「B社」の本社がある地域では、税務署の管轄が異なります。そのため税務官たちは「他の管轄で起こっている、他社の事例について、個別の話をすることはできない」という立場を明確にされていました。

 それは私たちも理解できます。私たちがはっきりさせたいのは「支配株主が、社員株主を経由して額面に近い価格で自社株を買い戻しても(その差額は)贈与にあたらないのか」という点です。B社のケースに特化した話ではなく、すべての会社に通用する税制の原則として、税務署の見解を知りたいのです。

 すると、税務官は「支配株主が購入した場合、純資産価額方式との差額が110万円以上になれば、みなし所得とみなされる可能性があります」と返答しました。ちなみに、年間110万円以下の贈与には贈与税がかからないので、株価の差額が110万円以下なら、そもそも問題になり得ません。

 しかし、その差額が110万円を超えた場合は「みなし所得」と判断し、贈与税の対象になる可能性がありますよ、と税務官は言ったわけです。

 そこで私は即座に尋ねました。

「可能性があるということは、『みなし所得』とみなされない可能性もある、ということですか? もし贈与とみなされない可能性があるなら、はっきり贈与とみなされるまで『21』でもB社と同じように社員株主を迂回した株式の無税相続を実施します」

 そう私が言うと、税務官はすかさず「他の管轄の話、ましてB社個別の件については具体的な返答はできませんので、もしそのようにされると言うなら、そうしてくださいとしか言いようがありません」と返答してきました。

 なるほど「やるならやってみなさい」という言い方です。そう言われて、私も黙って引き下がるわけにはいきません。

「みなさんご存じの通り、B社は我が社にとって競合相手であり、その会社が絶対的に有利な税制で経営をしているとしたら、私は経営者として見過ごすわけにはいきません。それを知りながら、何も対策を講じないというのは、経営者として会社に対する背任行為に当たります。だから、税務署の方が『みなし所得とみなす可能性もあるし、みなさない可能性もある』とおっしゃるなら、状況がはっきりするまで、会社にとって有利な方法を断固として実行するしかありません」と私は言い切りました。

 すると税務官は「B社と同じことをすれば、みなし所得とみなされます」と今度は断定してきました。

「みなされる可能性ではなく、みなし所得とみなされるのですね?」

「その通りです」