裁判で「株の価格」を決めるにあたり、B社サイドの弁護士が主張していたのは「過去にこれだけの実績があるのだから(純資産価額方式よりもはるかに安い)配当還元方式で株を評価するのは正当である」というものでした。

 その話を裏付けるべく「定年前に退職した社員株主」から買い受けた株価の資料を裁判所に提出しました。

 私は内心「そんな資料を公にしたら、もし違法だった場合、脱税の動かぬ証拠になるのに大丈夫だろうか……」と相手のことながら余計な心配をしましたが、私が心配したところでどうなるものでもありません。

 実際、その資料によると、株の実売価格は以下のようになっています。

B社 1万円株 → 2万円

Bチェーン 500円株 → 750~1500円

 ちなみに、これを純資産価額方式で計算し直すと次のようになります。

B社 1万円株 → 240万円

Bチェーン 500円株 → 4万1000円

(注:B社はBチェーンの株をたくさん保有しており、その資産等を含めると240万円になるというものです)

 純資産価額方式に比べて、過去に買い受けした実売価格(配当還元方式)が破格に安いのに驚きます。

 しかし、「そういった実績(安値での買い受け)を50年間積み上げてきたのだから、その取引自体は正当なものだ」とB社の弁護士は主張しました。

 一方で、社員株主側の弁護士はいくつかのポイントを主張しました。

 まず、純資産価額方式と配当還元方式にこれほどまで大きな差が出るのは、そもそも「配当金」が安すぎるからです。B社は同族が支配していて、彼らが51%以上の株を保有しています。要するに支配株主として存在しているわけです。支配株主であれば、株の配当金を最低に設定し、その数十倍の内部留保をすることが可能です。

 株式配当と比較して数十倍もの内部留保をしているというのは、実質的には「配当なし」と同じである。その上、会社が社員株主に対して株式の売り渡しを強要したり、価格固定(安値での算出)をするのは不当である。

 また、株式投資の利益を配当(それも安い配当)に限定し、その安い配当をベースに(配当還元方式で)株の価値を評価すれば、株主は売却益を得ることはほとんど不可能になる。

 それは株式投資の本質に反している。

 というのが、社員株主側の弁護士の主張です。実際の裁判ではもっと詳細なやり取りが行われ、その裁判に至る経緯と内容は「Fit」のホームページで公開しています。

 また、この連載で紹介している数値については、話を分かりやすくするために概算、あるいは近似値で示しています。

 そして株式の買い受け請求をしてから1年3カ月後、裁判所の仲裁により、ついに株式譲渡価格が決定しました。