トイレでもお客を和ませる

 トイレをいつも清潔にするというのも、飲食店の基本中の基本だけど、町田の店ではひと工夫。飲食店は大抵1時間おきぐらいにトイレが清潔かどうかを確かめて表にチェックを入れることが多いんだけど、町田の店では「このトイレは私○○が命に代えて清潔にします!!」なんて一言書いたチェック表を目立つところに張っている。それで、チェックを入れたりする代わりに「まずはお刺し身から! 新鮮!」とか「おでん! 体も心もぽかぽか」とか書いているの。ちょっとしたことだけど、よくあるチェック表みたいにただ作業したという印が付けてあるより、お客さんは楽しくて店に活気があるように見えるし、書き方次第で料理だって売れるようになる。何より、名前を書いた担当者がトイレ掃除をきっちりやるようになる。

町田「まんま屋 汁べゑ」のトイレ清掃チェックシート。担当者は、1時間毎にトイレが清潔かどうかをチェックして印を付ける代わり、料理やドリンクのアピールを書き込む
町田「まんま屋 汁べゑ」のトイレ清掃チェックシート。担当者は、1時間毎にトイレが清潔かどうかをチェックして印を付ける代わり、料理やドリンクのアピールを書き込む

 こんな話もあってね。その店長は、アルバイトの子たちも社員と同じように店の顔だと常日頃言っていて、ある存在感の薄いアルバイトの子には、キャラを立てるために「店長」ってニックネームを付けたんだって。そうしたら、「店長、ドリンクお願いします」とか「店長、皿洗っておいて」とか、スタッフが声を掛けるので、お客さんは「あれっ」って不思議そうな顔になってさ。それで「僕が『店長です』」なんてその子が料理を持って行けば、「なんだか面白いなこの店」と思ってくれる。“店長”になったことで、その子もすごく成長したんだそうだ。

 でもさ、お客さんに自分の名前を呼んでもらうとか、トイレを清潔にして気を配るとか、アルバイトの子も店の顔だと思うとか、町田の店長が力を入れていることは、どれも特別なことじゃない。だって、並外れた人間力がなくたって、ものすごく料理が上手じゃなくたって、誰だってすぐにできることでしょ。飲食店として当たり前のことばかりで、うちでも、店長ミーティングでさんざん繰り返し言っていることだ。でも、その当たり前をいつの間にか徹底しなくなっている店があったりするんだよね。特別なことをしなくても、当たり前を積み重ねていけば、絶対に繁盛店はできる。オレはそう思うんだ。

町田「まんま屋 汁べゑ」では、居酒屋の定番料理ポテトサラダを、アイスクリームを模した形で提供している。お皿を一緒に出し、ポテトサラダをお皿に移してコーンを砕いて食べてもらう。これに添えるソース入れはチョコレートメーカー、ハーシー社の容器を使って遊び心を演出
町田「まんま屋 汁べゑ」では、居酒屋の定番料理ポテトサラダを、アイスクリームを模した形で提供している。お皿を一緒に出し、ポテトサラダをお皿に移してコーンを砕いて食べてもらう。これに添えるソース入れはチョコレートメーカー、ハーシー社の容器を使って遊び心を演出

(構成:大塚千春、編集:日経トップリーダー

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