小さな店は、限られた資金でいかにお客さんの心をつかむかを考える。驚くような値段の料理を、人手をかけずいかに早く出すかを考え抜いている晩杯屋のノウハウは、ぎりぎりのところで絞り出すようにして出てきたものだろう。大手企業で頭だけで考えても出てくるアイデアじゃない。大手も頑張ってすごく考えた店を作ったりしていると思うんだけど、崖っぷちの状態でアイデアを絞り出しているわけじゃないから、本当に個人店らしい店を作るのは難しい。だいたい、ノウハウを編み出すために給料の高い大手の幹部が知恵を絞ったらコストが合わない。だから、こうした買収が起きるんじゃないかと思うんだ。

 晩杯屋のような店を作るためには、常に自分たちが「飢えている」ことが大切だ。「飢えて」いればびっくりするような底力が発揮できる。うちの店の子たちはみな独立を目指すんだけど、独立する時には絶対この「飢えている」状態が必要だ。でもさ、うちの店で給料をもらって働いているうちに「飢え」がなくなってしまったりするんだよね。

新人に教わることはたくさんある

 この間、うちの社員になった20歳の新人がいるんだけどね。28歳までに独立して自分の店を持ちたいって目標を持っているの。店に入ってきた当初は、誰でもすごくきらきらして目標に向けて「飢えて」いる。それを忘れないことが大事なんだ。だから、オレたちが彼に教えることはもちろんたくさんあるんだけど、「飢えている」彼から教わることもすごくいっぱいあるんだよね。

 うちの店が気に入って入社してきたんだろうから、その子には、入社前に外から見たうちの店のイメージを絶対に忘れるなと話してね。

 それでもし、2、3カ月たって、自分が思っている店のイメージと違っていたら自分で、自分が思った楽コーポレーションの店にしてみなって伝えた。それで3年ぐらいたって店長になったら、「最初に思った店のイメージの5割は実現できました。これからは100パーセント、イメージを実現していきたい」なんて言えるじゃない。入社したその時から、その子の店作りのドラマは始まっているんだよね。

「まだ何もできない、店で働き始めた子からもオレたちは学ぶことはたくさんある」と宇野氏(写真はイメージ)
「まだ何もできない、店で働き始めた子からもオレたちは学ぶことはたくさんある」と宇野氏(写真はイメージ)

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