宇野隆史社長率いる、居酒屋運営の楽コーポレーション(東京・世田谷)には、独立して自分の店を持ちたい若者が続々と集まってくる。独立志向の若手たちに商売のコツを伝えようと、宇野社長は9月から再び店に立っている。そんな宇野社長が、大手に勝つ店の戦い方を語り始めた。

 うちが出店する場所は、駅前じゃなくて駅から歩いて5、6分ぐらい。それで、お客さんが「こっちでいいのかな」とちょっと迷うような、ワクワクする色気を感じる場所が定番だ。だって、店の子たちが独立する時は、駅前の一等地なんかには出店できないからさ。

 そんな場所でも、大手チェーンがうちの店の近くに出店したりする。近くに大手の店ができるとオレはいつも、「オレたちも生きていけるな」と思う。だって、大手が出店するということは、その町のその場所に、たくさんのお客さんがいるということを証明してくれているようなものだからさ。そこでオレたちの商売をちゃんとやれば、絶対に店は繁盛する。

今年9月より、宇野隆史社長は、既存店を「間借り」して、自分が店舗に立つ店「まがり屋 木金堂」をスタート。若い店のスタッフに、現場で商売のイロハを伝授するのが目的だ(写真:大塚千春、以下同)

 ましてや、近くに店を出した大手がうちと同じメニューを出しているのを見ると、「いいね、いいね」と思う。例えばさ。その大手が肉豆腐を売りにしていたとするじゃない。そんな店では大抵、プロが撮った肉豆腐の写真を使った、大きくてきれいな看板を店頭に出している。

 10人の宴会が欲しいならそれでいいけど、2人連れのお客さんに「また来たい」と思わせる店にするための肉豆腐は、店頭じゃなくて接客でお客さんにアピールできる料理じゃなきゃいけない。煮崩れていない、形がいい豆腐の上に、四つ切りにした玉ネギを肉と一緒にとろとろに煮込んだものを載せてさ。「実はおいしさの一番のポイントはこの玉ネギなんですよ~。とにかく食べてみて!」なんて言いながら、お客さんに出してあげる。なんでもない一言だけど、そんな生の言葉がお客さんに「また来たい」と思ってもらえるきっかけになる。個人の店のメニューには、単なる料理ではない「ストーリー」があるんだよね。