食器もさ。伊万里とかいい食器を少し用意して、オレの「店」の料理はそれで出す。すると、間借りしている元々の店のお客さんは、「あのお皿で出している料理は何?」って気になるはずだ。そうしたら、「こっちの『店』の料理だけど、好きなの頼んでいいですよ」って声をかけられるじゃない。調味料も、市販品8割に2割だけ秘伝のタレを足したような特製ソースを作って、オレの「店」オリジナルの札を容器にかけておく。間借りといっても、皿洗いやトイレ掃除はしないから、経営者のわがままかもしれないけど、何かしら店の子たちの参考になってくれればいい、と思っているんだ。

東京・渋谷にある「楽」を巣立った卒業生による繁盛店「大衆酒場 酒呑気まるこ(さけのんきまるこ)」。店内に入ると壁面にはお薦めメニューがびっしり張られている
東京・渋谷にある「楽」を巣立った卒業生による繁盛店「大衆酒場 酒呑気まるこ(さけのんきまるこ)」。店内に入ると壁面にはお薦めメニューがびっしり張られている
[画像のクリックで拡大表示]

 うちの店から独立して自分の店を開いた若者はもう何百人にもなる。だから、連日満席の繁盛店の店主がいる一方で、店をたたむ子も出てきた。中には、頑張って3軒目を出した元アルバイトの子の下で働くようになったうちの店のOBもいる。でも、それは違うんじゃないかと思うんだよね。自分の店を持つからこそ、この仕事は面白い。なんで1軒ぐらい店を持てないのかなって、残念に思う。努力は必要だけれど、店を開いて繁盛させるのは決して難しいことじゃないとオレは思うんだ。

60~70歳のお客も気軽に立ち寄る

 うちから独立して自分の店を出してから10年以上になるOBで、苦戦していたんだけど、最近店が移転してからすごく調子を上げているヤツがいてね。新しい店は、60歳、70歳のお客さんも気軽に入れるような店にしようって考えたんだそうだ。そうしたOBの苦労は、自分の店の方向性を迷っている他の子たちの指標になる。

 山に登る時、ガイドブックも道しるべもなくて登るのは大変だけど、先人が作ってくれたガイドブックがあれば、登山はずっと楽になる。店作りも同じ。独立して自分の店をオープンした時などは、何日も何週間もお客さんが入らず不安になったりするものだけど、OBの体験を聞くことで、苦労した先にはお客さんでいっぱいの店があるんだとイメージすることができる。オレの「店」もそんな「ガイドブック」の一つになればいい。そう思っているんだ。

(構成:大塚千春 編集:日経トップリーダー

ちょっとした気付きで、人付き合いに悩むことはぐっと減り、ラクになります。今日から実践できる簡単なメソッドを満載した書籍『苦手な人が気にならなくなる本』が好評発売中です。
著者は、大手企業などで講演多数のコミュニケーションコーチ、山﨑洋実さん。「職場で合わない人がいて疲れる」「上司に理不尽な怒りをぶつけられる」「デキの悪い部下にキツくあたってしまう」「チームワークが悪くて作業がはかどらない」「クレーム処理がつらくてたまらない」・・・・・・。
誰もが一度は感じたことのある職場での人間関係の悩みを、口コミだけで5万人を集めた実績を持つカリスマコミュニケーションコーチの山﨑さんが一挙に解決します。

詳しくはこちらから

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。