結局、オレとかみさんは近くのカフェでお茶を飲んだんだけど、そこもなかなか気の利いた店でさ。朝8時からやっていて、温めたパンに生クリームを挟んでくれてコーヒーが付いたセットが手頃な値段でね。観光地なのに妙に高い値付けじゃないんだ。お店の人に聞いたら、先の地鶏と卵の店が運営しているカフェで、やっぱり考えることがすごいねと思った。そこは、フレンチレストランもやっていて、そこもすごく繁盛しているらしい。

 お店の人と少し話したんだけど、来てくれるお客さんはちゃんとつかまえなきゃねという話になってさ。漫然とした店ではお客さんは選んでくれないんだよね。洋服屋さんでもさ。例えば、「赤い洋服だったら絶対あの店」ってお客さんがすぐ頭に思い浮かべてくれる店にしなきゃ、これだけ店がある中で生き残れないでしょ。漫然と赤も黄もなんでもあるというんじゃ、その店じゃなくてもいいってことになる。

サラダ1品でお客が楽しくなる

 地方ではないけど、最近独立したうちのOBが横浜の有名な飲み屋街、野毛の辺りに店を出したの。その店のお通しのサラダは、カラフルな蓋の付いたガラス容器で出てくるんだ。自家製ドレッシングが選べて、野菜にドレッシングをかけたら蓋を閉めて自分で容器をシェイクしてくださいって具合。そうすれば、全体にドレッシングがよくからんでおいしいというわけだ。楽しい仕掛けだよね。「これ、いいね」と言ったら、「自分の店を出したら、ずっとこれやろうと思ってたんです」って言われてさ。お通しのサラダはいろんな店で見かけるけど、普通にサラダを出している店とこんな楽しい仕掛けがある店があったら、絶対楽しい仕掛けのある店を選ぶと思うんだ。でも、これってすごい努力がいることじゃなくて、明日からでもできる簡単なことでしょ。簡単だけどちょっとひねりがある。先のカフェだって、パンを温めることやそれに生クリームを挟むっていうのは、ごくシンプルなアイデアなわけじゃない。お客さんをつかまえる方法っていうのは、そうしたシンプルな工夫にあると思うんだ。

今年6月に楽コーポレーションのOB、小木泰輔氏(写真上中央)がオープンした横浜市の居酒屋「呑毛笑店 ゑぶり亭゛」(のげしょうてん えぶりでい)。コンセプトは「楽しく過ごせる居酒屋」。間口が広く大きなガラス張りになっており(写真下参照)店内から外がよく見えるため、小木氏は仕込みをしながら通りかかる地元のお客に挨拶する。野毛のはずれにありながら地元客でにぎわう
今年6月に楽コーポレーションのOB、小木泰輔氏(写真上中央)がオープンした横浜市の居酒屋「呑毛笑店 ゑぶり亭゛」(のげしょうてん えぶりでい)。コンセプトは「楽しく過ごせる居酒屋」。間口が広く大きなガラス張りになっており(写真下参照)店内から外がよく見えるため、小木氏は仕込みをしながら通りかかる地元のお客に挨拶する。野毛のはずれにありながら地元客でにぎわう

 さて、うちのOBも地方で店を開いた子が随分増えてきたけど、これからは「地元に帰る」というのも一つのキーワードだと思っている。自分の地元じゃなくてもさ、嫁さんの地元でお店を開いて成功しているOBは多いんだよね。

 

 自分や嫁さんのお父さんやお母さんがいて、面倒をみてあげなきゃいけないという事情もあったりするけどさ。ご両親がいれば子どもの面倒をみてくれたりして、ものすごく助かる。嫁さんの地元だったら、自分が忙しくても嫁さんも寂しくない。

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