オレはさ。離婚をしてそれまでやっていた5軒の店を前のかみさんにゆずってから、34歳で再スタートした。それが、今の楽コーポレーションの始まりだ。1978年に開店した東京・経堂の5坪の店は13、14人ぐらい入れて、すぐに2軒目を出せるぐらいの売り上げになった。ゼロからのスタートでも、「なんだなんだ」って不思議に思うぐらい飯が食えて、だから、飲食店をやれば人生、絶対食べていけるぞって確信できてさ。それで、大学生に声を掛けて「この商売面白いぞ、飯が食えるぞ」なんて誘ってアルバイトに雇っては、一緒に店をやるようになっていったんだよね。そうしているうちにどんどん人が増えて、店も増えた。うちの子たちは一流企業には入れない子たちばかりだけどさ。一流企業に入れなかったら人生落第じゃなくて、別の道があるってことに気付いてほしいんだよね。

「繁盛させやすい規模の店」とは

 よく、「どんな規模の店が一番繁盛させやすいですか?」なんて質問を受けるんだけどさ。商売のやり方によって全然違うわけだから、オレには分からない。店舗数をどんどん増やして、大きな企業にしていきたい人などは適正規模がまるで違うわけでしょ。

 オレが言えるのはさ。うちの子たちが生活できて幸せになれると思う商売の方法。うちで働いている間に月10万円、5年で600万円ためて、それを元手に銀行からお金を借りて2000万円ぐらいの軍資金で店を始める。そんな資金でやるんだから、めちゃめちゃいい場所には出店できないけど、そこで最初に入ってきたお客さんの心をしっかりつかめば、そのお客さんが次のお客さんを連れて来てくれて、1人が2人、2人が4人になっていく。自分だけの店だから、どんな小さなことにも食らいつくしかない必死さがある。だから、お客さんがお客さんを呼ぶ濃い接客ができるんだよね。

 そういう店では、店主となる子たちがちゃんと「主役」になれなきゃいけない。だから、自分1人で店全体を見渡せてドリンクや料理を「売り切れる」と思う広さが「適正規模」だ。10人座れるカウンターに4人がけのテーブル席を3つ。さらにもう3坪広い店舗を借りられれば、10人ぐらい座れて宴会のお客さんが利用できる小上がりも作れる。そのぐらいの店が、最初の1軒の規模の目安だ。

東京・笹塚に今年5月オープンした「炭火と酒 さささのさ」。店主は楽コーポレーションOBの片桐英二氏(左)。常時約20種の日本酒を揃える。出店場所は値段がある程度高くてもいいものを食べたいお客が多いエリアと判断し、鮮魚の炭火焼きを看板料理に据えた。店舗面積は15坪で2フロアに分かれ、2階には10人が座れて宴会利用がしやすい掘りごたつ席がある
東京・笹塚に今年5月オープンした「炭火と酒 さささのさ」。店主は楽コーポレーションOBの片桐英二氏(左)。常時約20種の日本酒を揃える。出店場所は値段がある程度高くてもいいものを食べたいお客が多いエリアと判断し、鮮魚の炭火焼きを看板料理に据えた。店舗面積は15坪で2フロアに分かれ、2階には10人が座れて宴会利用がしやすい掘りごたつ席がある

次ページ OBが見せる「夢」で独立心が燃え上がる