例えば、ふらっと本屋さんに入って何か面白い本はないかと探しているような時は、書店の人が書いた手書きの評が目に入るものだ。それで、その人がいかに惚れ込んでいるかが伝わる評が添えられた本は、思わず買いたくなる。惚れ込んでいることが人に伝われば、それは相手に行動を起こさせるエネルギーになる。

 飲食業ならずとも、会社には必ず起業した者が惚れ込んだ仕事への思い、方針がある。その惚れ具合を現場に伝えていくことは、人を引っ張っていく中で一番重要だと思う。会社の方針にいかに惚れ込み、面白がっているかが現場に伝われば、それが現場の興味にもなりパワーになるからだ。起業者と現場のプレーヤーが共鳴すると会社は面白くなる。面白い会社には、それに引かれる人たちが1人集まり、2人集まりと輪が広がり大きくなっていく。そうやって、会社も大きく育っていくのだろうと思う。

店の休業も集客のきっかけにできる

 ただ、オレ自身は会社を大きくして「企業」にすることには興味がない。企業として頑張っている人たちもすごく尊敬するんだけど、オレは勉強家じゃないから、お客さん一人ひとりの顔が見える町の商店のような規模で店を考えるのが楽しいんだ。

 自分のごく身近で見つけたちょっとした感動や驚き。それがオレが商売をやる上でのとびきりの宝物だ。

 例えば、ある朝、ゴルフに行く前にコンビニに寄った時のこと。レジのおばちゃんの「私からおにぎりを買った人はスコアいいよ」という一言に感動したことがある。その一言で、ただのおにぎりが断然輝くわけでしょ。店の料理だって、そんな簡単な一言で輝かせることができるという、大きなヒントになる。

 うちの経堂の店の近くにあるラーメン屋にも感動させられた。ある時、高校生たちが、ぱーっと自転車で店の前にやってきて「あー! 今日休みだ」「ここのラーメン屋、かっこいいんだぜ。年中休むの」なんて話していたんだ。その店は、「スペインの国際麺会議に出る」などと張り紙を出して長期休業してしまう店でね。
 「ラーメン屋だからクーラー入れても効かないから」と夏の暑い時などに1カ月とか旅に出てしまう。でも、店を閉めている時はいつも楽しい張り紙をしていて、その面白さが高校生にも伝わっている。休むことでお客さんをさらに引きつけている。すごいことだと思う。

<b>東京・経堂にあるラーメン店は時折長期休業に入る。この張り紙の面白さで、店を休むことまでお客を引きつける魅力にしている</b>
東京・経堂にあるラーメン店は時折長期休業に入る。この張り紙の面白さで、店を休むことまでお客を引きつける魅力にしている

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