オレはさ、長い間うちのOBを見ていて、店を持つなら3軒ぐらいまでが一番いいんじゃないかなと思うようになったの。4、5軒になるとせっかくの個人店のにおいが薄れてきたりして、人によっては難しいんだよね。

見失いがちな商売の本質

 1軒目の店は、とにかくお客さんに来てもらえて儲けを出せる分かりやすい店をやる。2軒目からは少しずつ自分のやりたいことを広げていく。それが、店を安定して繁盛させるための方法だとオレは思う。

楽コーポレーションOBの萩原裕介氏が東京・二子玉川に今年開店した「貮古玉一本堂」(にこたまいっぽんどう)。東京出身の店主、萩原氏のコンセプトは「江戸の屋台」。カウンターは屋台を彷彿するつくりで、昆布締めなど「江戸前スタイル」の刺し身を出す(写真=大塚千春、以下同)
楽コーポレーションOBの萩原裕介氏が東京・二子玉川に今年開店した「貮古玉一本堂」(にこたまいっぽんどう)。東京出身の店主、萩原氏のコンセプトは「江戸の屋台」。カウンターは屋台を彷彿するつくりで、昆布締めなど「江戸前スタイル」の刺し身を出す(写真=大塚千春、以下同)

 だけど、これまで見てきた中にはせっかく何軒もの店を繁盛させていたのに、とんでもない方向に進んじゃった仲間もいてさ。

 鶏をむしゃむしゃ食べてビールを楽しく飲ませるような居酒屋をはやらせて、7、8軒の店をやっていたんだけどね。ある時、健康を考えた食事法のマクロビオティックにはまって、店のメニューにそれを導入しようとしたの。

 でもさ、居酒屋っていうのはお酒を売る商売だからさ。健康的な食事法とは相性が悪い。いつもなら2杯ぐらいしか飲まないお客さんを楽しませて杯を重ねてもらう商売なのに、マクロビオティックに引かれてくるお客さんはそんなことはしないわけでしょ。お店の子たちも、「僕たちは居酒屋を勉強しにきたんです」と言ってどんどん辞めちゃってさ。人がいなくなって店を次々にたたまなければいけなくなった。

 オレはさ、店はできるだけ簡単な方法で繁盛する方がいいと思っているから、そもそもなぜマクロビオティックなんて難しいことをやろうとするのかまるで分からない。

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