そりゃ、新しいことをやって長い年月をかけようやく店をはやらせて、パイオニアになるような人もいるだろう。すごいな、と思うけど、オレは楽に店を繁盛させることができるなら、その方がいいと思うんだよね。

どこにでもあるメニューが強い

 メニューもさ。見た瞬間に「頼んでみたい!」とお客さんが思えることが大事でしょ。個性的であることにとらわれて、お客さんがすぐ「食べたい」と思わないようなメニューだったら、商売ではダメなわけじゃない。

 刺し身におでん、肉じゃが。おやじとおばちゃんがやっているような居酒屋の定番メニューっていうのは、昔からずっと変わらない。変わらないというのは、お客さんがそれだけ好きだってことだよね。だったら、「どこにでもある」メニューを商品にした方が、お客さんは喜ぶし、店の作り込みだって楽だよね。

 「個性的」な店ではさ。ちょっと変わった料理に力を入れていたりして、「普通に飲みたいけど、あそこに行くと料理が変わってるんだよなぁ」とか思って足が遠のいたりする。そういった料理を出すぐらいなら、オレはハンペンを焼いて出した方が、お客さんには喜ばれるんじゃないかと思うの。居酒屋でお酒と一緒に食べたくなるものって、単純で分かりやすいものなんだよね。「あそこの店の熱々の焼きハンペン、焦げ目が芳ばしくてうまいんだ」と言ったら、誰もが想像できておいしそうだと思えるでしょ。トリュフがたっぷりかかった肉じゃがが名物、とか言われても、想像ができなかったりするわけじゃない。そりゃ、おいしいかもしれないけどさ。そんなにいつも食べたくなるかなぁ、って思う。

楽コーポレーションOBの池谷直樹氏が、昨年7月末甲府にオープンした「酒場 日々(ひび)」。新鮮な刺し身に加え、炭火焼にした魚やおばんざい、日本酒が売りの店だ。チーズ入りマッシュポテトやなすの揚げ浸しなど、その日のおばんざいを盛り合わせた「おばんざい おまかせ4種盛り」は人気メニューの一つ(写真=大塚千春、以下同)
楽コーポレーションOBの池谷直樹氏が、昨年7月末甲府にオープンした「酒場 日々(ひび)」。新鮮な刺し身に加え、炭火焼にした魚やおばんざい、日本酒が売りの店だ。チーズ入りマッシュポテトやなすの揚げ浸しなど、その日のおばんざいを盛り合わせた「おばんざい おまかせ4種盛り」は人気メニューの一つ(写真=大塚千春、以下同)

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