若い子たちは、だいたい他の店などで見てきた目新しいメニューを取り入れたくなったりするわけ。でも、そんな「不得意」なことをやるより、「得意分野」である居酒屋の人気メニューをとことん売ったほうが、絶対楽でしょ。

 人気メニューは、現状で「マックスに売っている」と店の子たちは思っていたりするんだけど、得意分野なんだから、考えればもっと売る方法はあるはずだ。うちでは肉じゃがを、今「これまでの倍売ろうぜ」とはっぱをかけている。既に多くのお客さんが頼むメニューだから出数を2倍にするのは難しいけど、「プラス200円で2倍の大盛りにします!」なんて言えば、お客さんにも喜んでもらえて売り上げも伸びるでしょ。それに、人手不足の中、料理数が増えるより同じ料理の単価が上がったほうが、店を回しやすい。

人手不足でも魅力ある料理を出す

 この春は就職するなどで、アルバイトが5人いなくなった店があったりして、最近は人繰りが大変だ。そうしたら、人手がなくても魅力的に出せる料理を考えることも必要になってくる。

 うちの店は、刺し身が看板料理の一つ。本当はお客さんの目の前で柵を切って盛り付けてこそ材料の新鮮さ、魅力をアピールできるんだけど、人手がなくなると営業のピーク時にはこの作業が大変になる。そうしたら、目の前で柵を切らなくてもどうやったら魅力的な刺し身に見えるかを考えればいい。

 例えば、薄造りを昆布にはさんで作る昆布締めならさ。ラップをかけておいて、すぐ出せる状態で準備しておけるでしょ。それで提供する時には、お客さんの目の前ですっと刺し身の上の昆布をずらしてお皿に盛れば、魅力的でおいしそうに見えるよね。

「□ニ○」の看板メニューである角煮は生春巻きの皮(ライスペーパー)で包んで食べる。しかし、水戻しした生春巻の皮は扱いにくい。そのため、お客が食べやすいようあらかじめ水戻しした皮を小さな皿に張ってラップをかけ、生春巻きの皮の袋に入れてカウンター上の洗濯物干しにぶら下げている。お客を楽しませる工夫でもある

 商品は、あれこれ頭を悩ませて考えることで売る力が強くなっていく。どうせ力を付けるなら、不得意な分野であがくより得意分野の売る力を濃くしていったほうが、ずっと楽に繁盛する店ができる。オレはそう思うんだ。

(構成:大塚千春、編集:日経トップリーダー