オレはさ。自分で考えるだけじゃなくて、他の店で「これはいい」と思ったら、どんどんマネすればいいと思うの。もちろん、自分ならではのアレンジも加えてね。それですぐにやってみる。実際自分でやってみなけりゃ、作る時や売る時の工夫も分からなければ、お客さんの反応も分からない。

ダジャレが埋めるお客との距離

 うちの店は、各店の店長が自分でメニューを決めているんだけど、ある店でやっていたシュウマイを他店の店長が「いいですね」って気に入ってさ。うちの子たちは料理人としての腕はないから、シュウマイといっても肉ダネをきれいに包むんじゃなくて、イカシュウマイみたいに皮の細切りを肉ダネに引っ付けただけのものなんだけどね。そうしたら、その子は自分なりのオリジナリティーをって考えたんだろうね。シュウマイで有名な崎陽軒(きようけん)をもじって「不器用軒(ぶきようけん)のシュウマイ」ってメニューに載せたんだ。それで、「不器用だから、ヒラヒラ、皮をくっつけただけなんですよ」って、お客さんとの会話の糸口にしている。すごいなと思った。

 「不器用軒」みたいなちょっとしたシャレ、オレはすごく好きなのね。今年の2月に湖池屋がフライドポテトをもじって「プライドポテト」と銘打った、国産ジャガイモ100%の新製品を出した時も、「これはいいね。売れるぞ」と思った。歌唱力のある女子高生の、パワフルなCMも印象的だけど、「プライドポテト」みたいに、すごく簡単なもじりなのに訴求力がある言葉を使ったのは見事。居酒屋のメニューでそんな言葉を使えると、お客さんにニヤッと笑ってもらえて、共鳴してもらえる。店のファンになってもらえるんだ。

 先の「不器用軒のシュウマイ」の子は、メニューだけじゃなくて、接客でもどんどん他の店でいいと思ったことを取り入れている。あるうちのOBの店では、お客さんが帰る時、単に「ありがとうございました」と言うんじゃなくて、「ありがとうございました。また、来週」と言っているんだけどね。「不器用軒」の子がよく見ていたら、お客さんへの挨拶のために挙げた手を「また帰ってきて」という風にくるっと手前に返しているって言うの。それで、自分でもそんな挨拶をするようにしたんだって。

 どの店でもやっているように「ありがとうございます」と頭を下げられるより、そんな気持ちが伝わる挨拶をされた方が、ぐっと店との距離が縮まってお客さんもうれしいよね。そうしたほんのちょっとしたことの積み重ねで、店はお客さんに愛され繁盛していく。オレはそう思うんだ。

(構成:大塚千春、編集:日経トップリーダー

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