安くて手軽なメニューも大事

 そのバーでは、つまみについても話したりしてさ。店にはちゃんと厨房機器があって色々凝った料理ができるんだけど、仕込みも調理も大変でしょ。

 だから、1000円台で凝った料理を出すなら、もっと安く出せて手間がかからないものを考えて数を売った方がいいんじゃない?って話したの。例えば、レモンを薄くスライスしてグラニュー糖をかけた「レモンのカルパッチョ」とか、豆腐に岩塩とオリーブオイルをかけた「豆腐のカルパッチョ」とかね。レモンをスライスするのなんて、1分もかからないわけじゃない。

薄切りレモンにグラニュー糖をかけた「レモンのカルパッチョ」。簡単なメニューだが、お客に人気
薄切りレモンにグラニュー糖をかけた「レモンのカルパッチョ」。簡単なメニューだが、お客に人気

 豆腐にかけるオリーブオイルとかはさ。高めのいいのを買ったって料理の原価率にそう響くもんじゃない。だから、いいオイルを使ってお客さんに出す時に、「このオリーブオイル、奮発してすごくいいのを使っているんです」なんて言いながら、「もっとかけます?」って声をかける。それでお客さんが「もっとかけて」なんて言ったら、そこにやり取りが生まれて、お客さんと「会話」ができる。ただおいしいものとか手間がかからないものを出せばいいんじゃなくて、そうやって接客を含めた全体をイメージしながらメニューを考える。それが、オレたち居酒屋の商売ではすごく大事だと思う。

 そのバーの子は、レモンにミントを飾ったりとか、豆腐にミニトマトを添えたり自分なりに「カルパッチョ」のアレンジをして、すぐメニューに載せていた。豆腐には、金沢の伝統的な魚醤「いしる」を添えて出したりしてね。いしるっていうのは、お湯で割ったらそれだけでうどんの汁になるぐらいおいしい魚醤なんだ。ちょっとした郷土色が出たメニューは、観光で来たお客さんにも喜ばれる。このカルパッチョシリーズ、実際にお客さんにも人気でよく出ているらしい。

豆腐に岩塩とオリーブオイルをかけた「豆腐のカルパッチョ」。金沢の郷土調味料「いしる」が添えられている
豆腐に岩塩とオリーブオイルをかけた「豆腐のカルパッチョ」。金沢の郷土調味料「いしる」が添えられている

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