居酒屋運営の楽コーポレーション(東京・世田谷)を率いる宇野隆史社長。金沢市の飲食店経営者と話して気付いたのは、自分に身近なことほど、店に生かせる強みを見逃しがちということだった……

 オレは20年ぐらい前から金沢に遊びに行くようになってね。新鮮な海産物があって、加賀野菜があって、すごく魅力的な食材が山ほどあるのに、居酒屋に行ってもそれを生かしたメニューがない。不思議なところだなと思っていた。

 知り合った金沢の飲食店経営者の居酒屋に行った時のことだけどさ。メニューにお刺し身がないから、「どうして出さないの?」って聞いたの。そうしたら、板前でもある店長が「刺し身は割烹で扱うもので、居酒屋なんかでは出さない」って言うの。割烹のお刺し身には勝てないから、居酒屋では誰も頼まないって言うんだよね。
 じゃあ、頼むか頼まないか、メニューに書いてみようよって言ってね。「金沢の台所」と言われる近江町(おうみちょう)市場に行って、5種類ぐらい魚を仕入れてさ。経木に品書きを書いてその夜、店で出してもらったんだ。それで、夜の8時頃店長に電話して「お刺し身どう?」って聞いたのね。そうしたら、驚いたような声で「全部売れました」って。

旅先として今や大ブームの金沢。写真は「金沢の台所」として知られた近江町市場。新鮮な魚介類が並ぶ(写真:金沢市観光協会)

 自分の身近にある食材ってさ。「当たり前」になりすぎて、どんなにお客さんに魅力的に見えるか、分からなくなっていたりするんだよね。