「広い店にお客は集まる」

 法的整理を決断する直接のきっかけは、売上高の約4割を占めていたとみられる渋谷店が18年秋に撤退せざるを得なくなったことだ。駅周辺の再開発が理由で、アートには店を移転する資金は残っていなかった。17年4月末を乗り切ったとしても、長期的な売り上げ回復の可能性がなくなった。

 石井側はこの状況を知り、様々な可能性を検討。受け皿となる新会社を設立し、上野本店の事業を1億数千万円で譲り受ける救済策をアートに提案した。アートは、石井案に乗るしかないと判断したようだ。17年5月8日に石井と事業譲渡の契約を結び、翌日に破産を申請。12日夕方には新会社の下、上野本店が営業を再開した。

 テニス、自転車ブームの終息をアートが乗り切れなかったのは、07年以降の出店などで負債を拡大したこと、14年に御徒町の店舗を整理する際に旧本店を閉めなかったことが大きい。旧本店は、木村社長にとって初の大型店で、「自転車という商品にも思い入れが強かった」(関係者)。そのため撤退の決断ができずに資金流出が続いた。

 ある業界関係者はこう指摘する。「木村社長は、広い店舗を持てばお客は集まると話していた。成長期はこの発想でも何とかなるが、売り上げが低迷する状況では広い店舗ほど固定費が重くなって利益を圧迫してしまうという視点が不足していた」。

 環境変化の波にのまれて業績が長期低落している場合、何よりもまず、経営トップが古い発想を捨てなければ事業を再生できない。アートの事例はそのことを物語っている。

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