「木村社長はスポーツ好きなことから店への思い入れは強く、店舗面積を広げて様々なスポーツを盛り上げたいと考えていた」(関係者)。特に、ランニングやアウトドア関連では、専門的な品ぞろえと接客力の高いスタッフがいることでアートは知られていた。

 長年の取引があったアウトドア業界関係者は「アートには普通の店にはない商品がそろっていた。僕らはアート店頭を見るととても勉強になった」と話す。この関係者によると、木村社長は各店の店長らに仕入れ先を精力的に開拓させていたという。スタッフは自ら仕入れた思い入れがある商品を直接説明して売ることで、他にはない手厚い接客を実現した。

ランニングブームが転機

 2007年に第1回の東京マラソンが開かれ、ランニングブームが起きると、アートは再び出店を加速させた。皇居の周りを走る人の需要を見込んでシャワー室まで設置した日比谷店、池袋店を相次いでオープンした。

山手線内にいくつも店を構えたが……
山手線内にいくつも店を構えたが……

 さらに10年には、御徒町駅前に百貨店が建てたビルの1階と2階に上野本店を移転。旧本店の建物は自転車・テニスの専門店として改装オープンした。移転と改装のため、2億円を超える新規融資を受けた。この大型投資が経営の転機になった。

 ランニングブームを追い風に、新店舗で売り上げを伸ばす狙いは、裏目に出た。11年3月、東日本大震災が発生し、スポーツイベントやレジャーの自粛が広がり、売り上げ低迷が始まったからだ。

 11年5月には赤字続きだった池袋店を閉店するなどしてひと息ついたものの、しばらくすると、再び業績が低迷するようになった。

 低迷から抜け出せなくなった背景として、東京商工リサーチ情報部の大平晃部長は「インターネット販売の影響がある」との見方を示す。実際、アート破産後の閉店セールでスタッフに尋ねると「商品の特徴を説明した直後に、店の外に出てスマートフォンで購入するお客様がいた」という。実店舗で商品を見て、価格の安いインターネット販売店で購入することがスポーツ用品でも増えていた。

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