物件も決まっていないのに窯の発注は無理と返答すると「中型の窯ならどんな物件でも合うから、とにかく発注してほしい」とせかされたという。

給与未払いで閉店始まる

 16年末からは取引先への支払いが滞ることが増え、信用調査会社への問い合わせが多くなった。

 17年4月半ばには代金の未払いが続いたある取引先が遠藤商事の預金の仮差し押さえに動いた。そのため本部に集めたFC店の売り上げからロイヤルティーを引いた分のFC店への戻しや、従業員への給与支払いが止まる。

 給与の未払いで出社をやめた従業員が出て一部の店は閉めざるを得なくなった。遠藤商事の手元資金はさらに減り、ついには営業を続けられずに、破産に至った。

 遠藤商事は店舗拡大の目標達成をあまりに急ぎすぎた。その理由を尋ねようと、遠藤社長に弁護士を通じて取材を申し込んだが、前出のように「破産手続き中」を理由に応じてもらえなかった。

 遠藤社長は「ナポリス」という業態を生み出し、「外食ベンチャーの雄」として注目を集めた。しかし、遠藤社長の考えたビジョンがいかに優れたものでも、少ない投資で成長できるITベンチャーなどと飲食ビジネスは違う。

 実際に食材や酒を仕入れる必要があり、店舗拡大には家賃や保証金などの費用が掛かる。遠藤社長はその点を甘く見ていたとしか思えない。社内にも、遠藤社長に手元資金の重要性を教え、出店に歯止めをかける財務に明るい人間は最後まで育たなかった。

 なお、遠藤商事の破産手続き開始とともに、同社が所有していた「ナポリ」「ナポリス」などの商標権は、これらの商標に担保権を設定していた飲食店経営支援会社に移転した。この飲食店経営支援会社は、17年7月に業務提携を発表し、これらの商標を用いたピザ店のフランチャイズ展開に新たに乗り出している。現在のナポリ、ナポリスは遠藤商事とは関係がない。