ヒット商品に恵まれて業績が伸びれば、それで得た資金に借入金を加えて設備投資を行い、次なる事業展開を図ろうとするのは経営者として自然な考え。だが、新しい本社ビルまで購入する必要があったかどうかは疑問が残る。

 「ひんやりジェルマット」のヒットが、東日本大震災という未曾有の大災害による“特需”に支えられた面が大きかっただけに、なおさらだ。

実力なのかツキなのか

 東京商工リサーチ情報部の担当者は、ヒラカワコーポレーションの例を踏まえ、「思いがけない売り上げ増に恵まれたら、それが実力によるものなのかそれともツキによるものか、さらにどのくらい続きそうかなどを十分見極める必要がある」と話す。

 事業拡大のために設備投資を行って借入金が膨らめば、特需が去って通常の売り上げに戻った場合、返済が困難になることは十分あり得る。ヒット商品を出せた場合でも、無理に拡大に走らず身の丈に合った経営を続けることが、成熟した経済の中で中小企業に求められるのかもしれない。

(この記事は、「日経トップリーダー」2017年1月号に掲載した記事を再構成したものです)

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なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則

 なぜ、あの企業は破綻したのか。経営者向けの月刊誌「日経トップリーダー」が帝国データバンク、および東京商工リサーチの協力を得て、 近年、経営破綻した23社を徹底取材。現場社員や取引先そして経営者本人の苦渋の証言、決算や登記簿などの資料から、破綻に至った経営を多角的に読み解く。

【主な内容】
第1章 急成長には落とし穴がある
■破綻の定石1 脚光を浴びるも、内実が伴わない
■破綻の定石2 幸運なヒットが、災いを呼ぶ ほか
第2章 ビジネスモデルが陳腐化したときの分かれ道
■破綻の定石4 世代交代できず、老舗が力尽きる
■破綻の定石5 起死回生を狙った一手が、仇に ほか
第3章 リスク管理の甘さはいつでも命取りになる
■破綻の定石8 売れてもキャッシュが残らない
■破綻の定石9 1社依存の恐ろしさ ほか
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