いよいよ会社が危なくなり、私が「仕事をください」と昔のお客様を回ると、「君は昔、仕事を断っただろ。そんな君に出せるわけがない」と追い返されたときには本当に悔しかった。

 父を反面教師としてきた優しすぎる私は、結局、経営者の器ではなかったのでしょう。800台の設備を300台まで減らしましたが、それ以上の改革は現場の協力が得られず、手つかずでした。

中国市場で「ギャンブル」

 破綻の直接の引き金となったのは、中国事業の失敗です。2011年に大手機械メーカーから、中国企業の大量発注があるので、減速機を作ってほしいと依頼された。16億円の投資が必要でしたが、提示された発注量が続けば2年で元が取れる。積年の借金も一掃できるのではないかと考えました。

 私はギャンブルをしました。しかし、工場がフル稼働を始めてからわずか半年後、中国経済の変調で建機需要が急減。テラマチの設備も止まりました。そろばんを弾き、こういうふうになったらいいなと、自分の思いだけで絵を描く。それでは失敗しますよね。

暗闇に光が差した瞬間

 民事再生の申し立てをしようと決めたのは申請3日前でした。申請書を出し、外に出ると景色が違って見えました。真っ暗な世界に光が入ってきたような感覚です。

 それまでは経営不安の噂が流れていましたから、既存の取引先に仕事を減らさないでほしいと頭を下げ、その一方で新しい仕事を取るために営業に走り回る日々。夜、会社に戻ってから再生計画を詰めたりしていると、帰宅は朝4時です。

 風呂に入って2時間うたた寝して、6時には朝食を取って会社に向かう。この生活を2年間続けました。あの頃は頭の中がもうろうとし、会社はどこまで落ちていくんだろうと不安でならなかった。

 それが民事再生の申請書を出した後は、何をいつまでにしてください、というスケジュールが示され、それに基づいて進めていけばいい。もうこれ以上、落ちなくていい。期日ができたことで、私は救われた思いがしたのです。

 その後会社は中国企業の出資を受け、再スタートを切りました。弟は会社に残っていますが、私が戻ることはもうありません。

 先日、個人の自己破産手続きが終了し、ようやく自分の先々のことを考える時間ができました。我が家の発祥は、寺の僧侶です。今後は仏の道を歩みながら、私のような苦しみをしなくて済むように、経営者の相談に乗ることができればと思っています。

(この記事は、「日経トップリーダー」2018年2月号に掲載した記事を再構成したものです)

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なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則

 なぜ、あの企業は破綻したのか。経営者向けの月刊誌「日経トップリーダー」が帝国データバンク、および東京商工リサーチの協力を得て、 近年、経営破綻した23社を徹底取材。現場社員や取引先そして経営者本人の苦渋の証言、決算や登記簿などの資料から、破綻に至った経営を多角的に読み解く。

【主な内容】
第1章 急成長には落とし穴がある
■破綻の定石1 脚光を浴びるも、内実が伴わない
■破綻の定石2 幸運なヒットが、災いを呼ぶ ほか
第2章 ビジネスモデルが陳腐化したときの分かれ道
■破綻の定石4 世代交代できず、老舗が力尽きる
■破綻の定石5 起死回生を狙った一手が、仇に ほか
第3章 リスク管理の甘さはいつでも命取りになる
■破綻の定石8 売れてもキャッシュが残らない
■破綻の定石9 1社依存の恐ろしさ ほか