その傾向は、父の代に移ってからも変わりませんでした。父も職人肌。祖父は30億円の借金をつくり、父はそこから10億円減らしたものの、2005年に私が社長を継いだときは20億円の借金がありました。20億円というのは、当時の売り上げとほぼ同額です。

非効率な生産現場

 大量の機械を抱えて一貫生産することが、自社の強み。その特徴を磨くためには、どんどん利益を設備投資に振り向けていいのだと、祖父も父も思い込んでいたのかもしれない。でも、それは間違いです。財務に見合った投資をしなければ経営は成り立たない。

 もっとも、私自身もその片棒を担いだ1人です。効率化とはほど遠い経営をしていたからです。今になって振り返れば、自社の設備を最大限に生かそうという意識が全く欠落していました。

 どの会社も既存事業の成長力が落ちれば、新規事業を考えるでしょう。
 テラマチの歴史を振り返っても、そうでした。

 創業当初は船舶ディーゼルエンジン用、農業機械用のネジ類の製造を得意にしていました。その競争力が落ちてくると、繊維機械の部品、次は工作機械部品、さらに建設機械の部品へと主力商品を移しました。表面的には、環境に合わせて柔軟に商品を変えていると映るかもしれません。ただ、利幅が取れる商品を作るという発想しかなく、既存の設備がほとんど生かせない事業に出ていったのです。

 例えば自前で熱処理炉を持っているにもかかわらず、建機用シャフトの熱処理は、外部の専門会社に頼んでいました。テラマチの熱処理炉は、農機などに使う小型部品には向いていましたが、大型の建機用シャフトとなると3本しか入りません。それが専業メーカーの熱処理炉なら100本入る。生産効率がまるで違うのです。

 新規事業の立ち上げのたびにほぼ一から投資をするので、恒常的な資金不足。中には月に1回、年に1回しか使わない機械もありました。使わないなら売却すればいいのにと思うでしょうが、それすらしなかった。

 全く使わないわけではないし、新しい機械が壊れたら古い機械の部品で修理できると考えていたからです。

 田舎ですから工場は広い土地を贅沢に使っていましたが、800台の機械が6棟の工場に点在しているのは、とても非効率。工場のあちこちに仕掛品が滞留し、スムーズにものが流れない。

 2000年代以降、少量多品種の仕事が増えていたのに、テラマチは対応が遅れていました。その原因がこうした過剰設備でした。

製品の原価は知らない

 どうして、既存設備が生きる分野に進出できなかったのか。そこにはいくつかの原因があると思いますが、その1つは、私自身、どの部品が儲かっているかを理解していなかったことです。