宮坂:現状分析し、「こっちの道に進まなければならない」と、社員を説得する力も必要でしょう。大山豆腐(17年1月民事再生申し立て)の社長はアイデア力はあったが、最後の最後まで自分がやりたいことだけをやったという印象。赤字が続き、ビジネスモデルの限界ははっきりしていたのに、視野が広がることはなかった。

事業の撤退を決断できず
大山豆腐
大山豆腐
 自動車整備会社の設立を経て、創業者が立ち上げた大山豆腐(神奈川県伊勢原市)。豆腐、納豆、油揚げ、豆腐レストランと次々に事業を拡大したが、競争が厳しく赤字続きに追い込まれた。しかし、創業者の思い入れが強く、事業を絞り込めず、17年1月に民事再生を申し立てた。

手は打つものの、見通しが甘い企業も目についた。例えば機械部品メーカー、テラマチ(16年1月民事再生申し立て)は中国の需要をあてにし、16億円の設備投資をしたが、中国の経済情勢が変わり、発注がストップ。それが破綻の引き金になった。

「一貫生産」が弱みに転じる
テラマチ
テラマチ
 部品メーカーとしては、国内屈指の機械台数を保有していたテラマチ(愛媛県西条市)。一貫生産で培った技術力には定評があり、「はやぶさ2」の搭載装置の開発にもかかわった。だが小ロット化、短納期化に対応できず、起死回生を狙った中国事業も失敗。16年1月に民事再生を申し立てた。

久保:設備投資の回収シミュレーションが、結果的に甘い会社が多い。私は製造業の破綻事例をよく取材しますが、楽観的な見込みに基づく設備投資が非常に目立つ。変化の激しい時勢ですから、固い需要が確定していない限り、最初から過大な設備を持つのは危険です。少し試して様子見し、実績に応じて広げるくらいでいい。

 仕出し弁当を手掛ける味彩(16年10月民事再生申し立て)にしても過去の借り入れが多く残っている中、総額10億円を投じて弁当工場を稼働させたことが資金繰り悪化を招いた。経営者なりの事情があって、起死回生の手だったのだろうが、残債がある中での大型の設備投資には慎重さが必要だ。

攻めの弁当工場稼働で失敗
味彩(あじさい)
味彩(あじさい)
 味彩(東京都多摩市)は仕出し弁当の製造と冠婚葬祭向けの食事提供サービスを主力としていた。有名料亭の弁当製造を受託するなど、品質や技術には定評があった。しかし、大量受注を見込んで工場を稼働したが実現せず、資金繰りが悪化。16年10月に民事再生法の適用を申請した。

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