「社内には昔からの職人がたくさんいる。彼らは難しい仕事を成し遂げることに喜びを見いだし、小ロット化の対応などにはなかなか意識転換が図れなかった。一貫生産・大量生産で成功した長い歴史も邪魔をして、舵を切ろうとしても十分に切れなかった。経営者としての私の力不足だ」

中国建機市場を見誤る

 先代から20億円の負債を継いだ寺町社長にとって、改革は時間との勝負でもあった。そんな折、大きな仕事の話が舞い込む。中国製の建機に組み込む減速機の生産だ。時は11年4月、声をかけてきたのは国内大手機械メーカーA社。

 減速機は動力の回転数を制御する基幹パーツ。A社はその減速機と自前の油圧機器をセットで、中国の大手建機メーカーに納品するという。ただ、発注元の中国企業が提示した生産量を作るとなると、テラマチは16億円の新規投資をしなければならない。

 当時、中国の建機需要は拡大基調にあった。その勢いがいつまで持つかは分からないが、提示された発注量が続けば2年で元が取れると、寺町社長はそろばんを弾いた。そしてこの仕事がうまくいけば、懸案の有利子負債をかなり軽減できるという期待もあった。こうして16億円の投資に踏み切る。

 ところが工場がフル稼働を始めてからわずか半年後、中国経済の変調で建機需要が急減。中国企業が減速機を内製化する方針に変えたこともあり、テラマチの生産ラインは止まった。A社は8億円相当の設備をテラマチから買い取り、残りの設備についてもテラマチが他社に売却したが、残った借金と金利負担は重かった。

 さらに追い打ちをかけたのが「得意先の大手B社に、そのライバル社の仕事をしたという理由で、16年3月期の年間発注量を3分の2に減らされた」(関係者)ことだ。3月の決算期まで持ちこたえれば一息つけるという瀬戸際の状況も、これで万事休すとなった。

 企業が3代も続けば、経営環境は大きく変わる。経営改革が成功すれば会社はより発展し、失敗すれば危機を招く。それが3代目に課せられた宿命である。テラマチはスポンサーを募り再建を目指すが、寺町社長はいずれ自己破産し、経営から身を引くという。

(この記事は、「日経トップリーダー」2016年3月号に掲載した記事を再構成したものです)

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