利益が落ちるとコスト管理を徹底してやりたくなります。ここに落とし穴があります。
私たちが管理しなければならないのはコストではなく活動です。
何であれ企業が活動すれば、必ず経営資源を消費し、コストがかかります。しかし、コストがかかり、お金を使うこと自体は、一概に悪いとはいえません。問題は使い方です。そして、お金の使い方の良否とは、活動の良否の問題です。だから、管理すべきはコストでなく、活動です。
すべての活動について、「本当に成果に結びついているのか」を、厳しく問わねばなりません。
その基礎になるのが時間管理です。
コスト削減より、活動削減
時間とは、活動に不可欠で有限の貴重な燃料です。
しかし時間という資源の無駄遣いに、私たちはなかなか気づきません。形がなく目に見えないからです。ドラッカー教授は「われわれはどのように時間を過ごしたかを記憶に頼って知ることはできない」(『経営者の条件』)と指摘します。記憶はあてにならない、ゆえに記録せよ、と訴えました。
時間を記録すると、活動を管理する準備が整います。活動の中身が明らかになるからです。
次にすべきは、活動を仕分けることです。すべての活動に、次の3つの問いを投げかけます。
第1に、その活動を減らせないか。
第2に、その活動をやめられないか。
第3に、その活動を増やすべきか。
すべての活動を仕分けたら、最後の問いです。
第4に、新たに始めるべき活動はあるか。
不要な活動を廃棄し、減らせば、時間に余裕が生まれ、重要な活動に時間を使うことができます。
このような時間管理は本来、セルフマネジメントの領域に属するものです。組織が時間を所有することはできません。時間はあくまで個人が所有するものだからです。
しかし、組織のメンバーである個人の時間の使い方に、組織が無自覚ではいけません。個人の活動の集積が組織の活動である以上、個人の時間管理の巧拙は、組織の成果に大きく影響します。ここに、企業が社員のセルフマネジメントを取り上げ、促進すべき理由があります。
企業が時間管理に取り組むことは、社員との関わり方を根本から見直す機会になります。時間管理の本質は、活動管理です。柴田社長は覚悟を決めて、抜本的な改革に乗り出しました。社員の意識が変わり、行動が変わりました。業績アップはその結果に過ぎないのです。
(この記事は「日経トップリーダー」2016年3月号の記事を再編集しました)

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