その雑誌で印象的だったのは、家事の時短やバスタイムを楽しくする記事が目立ったこと。仕事と家事、育児に追われて忙しいなかで、わずかに残された自分の時間を大事にしている姿が浮かび上がった。
そんな女性たちは、何を求めて美容室に来るのか。
「ただ髪を切るために来ているわけではない。髪を切るのはあくまで手段。その背後に、癒しを得るとか、きれいになった自分の姿を見て自信を取り戻すといった、本来の目的がある」と、才野社長は考えた。
では、そんな顧客の欲求を満たすため、どんな価値を提供すればいいのか。
「選べるシャンプー」がヒット
ここまで議論を掘り下げると、顧客満足を上げるための新しいサービスの提案が、社員たちから次々に出てきた。
例えば、シャンプーを複数用意して、顧客が自分の好きな香りのものを選べるようにする。
あるいは、頭のツボを示す図を見せながら、肩こりなどの症状に合わせて、重点的にマッサージする場所を決める。
こうしたサービスが好評を博し、顧客のリピートや紹介が増えた。
「スタッフが生き生きしていて、元気がいい」と、接客を評価する声も聞かれるようになった。
顧客の現実に開眼してから約2年。売り上げは前年同月比20%以上の成長を続け、念願の2号店出店を果たした。


Powered by リゾーム?