そんな状況が10年ほど続いた2005年ごろから、原因不明の内臓疾患や突発性難聴を患い、年に2、3回の入退院を繰り返すようになった。このまま働けなくなるのではないかと思った。

 そんな窮地のなかで自分を振り返り、「社員に嫌われてまで、何のために頑張ってきたのだろう」と疑問に感じた。

 このころに参加したドラッカーに学ぶ経営セミナーで大きな衝撃を受けた。

 「利益とは条件」 ――これが、ドラッカーのマネジメントの根幹にある考え方だという。

 長年、利益を出すために奔走してきた瀧野専務は納得できなかった。

 「会社は営利組織だ。利益を出さなければ倒産してしまう。利益こそ目的ではないのか」

 しかし、ドラッカーの思想が気になり、翌日、代表作の一つである『経営者の条件』を購入。読み進めるうち、すとんと心に落ちた。

 「企業の存在意義は、顧客の幸せにある。そして利益は顧客満足の尺度。利益が上がるのは、自分たちの仕事ぶりを顧客に評価してもらえたことの証拠に過ぎない」

 そう納得したとき、創業時のことを思い出した。

蘇った創業の志

 北海道健誠社は、もともとは病院向けの寝具リースからスタートした。

 きっかけは、個人で羽毛布団のセールスをしていた瀧野専務が、ある病院に偶然、売り込みに行ったこと。当時、病院の寝具は木綿布団が主力だったが、それと比べて羽毛布団は寝心地が格段にいいという。

 「患者さんの療養環境を快適にしたい」

 そんな純粋な思いから、会社設立を決意した。

 ただ、病院向けの寝具リースは利権の多い業界だった。新規参入の障壁は高く、嫌がらせも受けた。しかし、患者の利益を優先する北海道健誠社の姿勢に支持が集まり、事業は軌道に乗った。

 「あのころの自分には、世の中の役に立とうとするミッションがあった」

 それがホテル向けのクリーニングなどに手を広げ、借入金返済の重圧にさらされるなかで、無意識のうちに、利益のことしか考えない“独裁者”になっていた。