「われわれの事業は何であるべきか」を問えと、ドラッカーは説く。

 すぐに思いつく答えは「クリーニング業」。だが、この位置づけでは現状を脱せない気がした。

 クリーニング業界は、価格競争が激しい。特に法人顧客にとって、クリーニング料金の値下げは利益に直結するので歓迎される。だが、そうすると北海道健誠社の利益は減ってしまう。逆に、値上げに成功すれば、自社の利益は増えるが、顧客の利益は減る。要するに、限られたパイの奪い合いだ。そんなシーソーゲームのような関係に気づき、疑問を感じた。

 顧客との関係をウィン・ウィンにすることはできないだろうか。

クリーニング店と地元ホテルをつなげれば……

 そこで瀧野専務が思いついたのが「顧客の顧客を増やす」というアプローチだった。

 北海道健誠社の売上の約半分を占めるのが地元のホテル向けのクリーニングで、約600施設と取引がある。営業の際に、冬になると道外からの観光客が減り、客室が埋まらないという悩みをよく耳にしていた。この時期の集客に貢献できれば、ホテルは喜ぶ。クリーニングの需要も増えるので、最終的には自社の利益にもなる。まさにウィン・ウィンだ。

 地元の観光地を盛り上げるため、自社の経営資源を使ってできることはないかと、考えた。

 北海道健誠社は、個人向けのクリーニング店「ランドリーム」を展開しているので、地元住民との接点があった。さらに障害者が多い従業員のために通勤用のバスを保有していた。

 そこで、このバスを使ってクリーニング店の個人客を法人顧客のホテルに送り込む、無料の日帰り温泉ツアーを企画した。

チェーン展開するクリーニング店を集合場所にした温泉ツアーを企画。法人客であるホテルの集客に貢献した

 ツアーに参加できるのは、入会金と更新料を払っている「ランドリーム」会員に限定。告知にはクリーニング店のチラシの裏面を利用した。送迎は北海道健誠社が無償で行い、ホテルには大浴場を開放してもらった。