ドラッカー教授の著作に学んで、成果をあげた日本の中小企業を紹介する本連載。2回目となる今回からは、まず冒頭で、成果につながったドラッカー教授の言葉とその解説を紹介。さらに、その言葉の理解を深めるのに役立つ、中小企業の実例を紹介した後、ドラッカー教授の言葉を生かすための視点をさらに詳しく解説します(第1回はこちら)。

【ドラッカー教授の言葉】

企業とは、外部にある資源すなわち知識を、外部における成果すなわち経済的な価値に転換するプロセスである

『創造する経営者』(ダイヤモンド社)

【解説】

 企業の成果とは、顧客の心理や行動に変化を起こすことです。例えば、「おいしい」「安心した」「楽になった」……など。企業はすべて、こうした変化を外部にもたらすことで対価を得ます。
 変化を起こすのに必要な資源も外部にあります。
 ヒト、モノ、カネといった資源は通常、外部から調達され、社内に備蓄されます。
 一方、外部にあるままで、ほとんど生かされていない重要な資源があります。
 それは、顧客です。例えば、自社の顧客を活用することで「顧客の顧客」を増やせないでしょうか。その成果は企業の枠を超え、広く地域に広がる可能性を秘めています。

【実例】

 創業以来、売上は右肩上がり。しかし、悩みは深かった。

 北海道健誠社(北海道旭川市)の瀧野雅一専務は、1992年、20歳のときに父母と起業した。

北海道健誠社の瀧野専務
北海道健誠社の瀧野専務

 最初に手掛けたのは病院向けの布団のリース。木綿布団が主流だった業界に羽毛布団を導入したところ、ヒットした。これを足掛かりに、病院やホテル向けのリネンクリーニングや個人向けのクリーニング店の展開に事業を拡大。社長と副社長に就任した父母が、障害者雇用に積極的に取り組んだことから、メディアでも注目された。

赤字回避に奔走する日々

 だが、収支は厳しかった。

 瀧野専務は赤字回避に奔走するストレスから体調を崩しがちで、入院することすらあった。

 そんなときに、ドラッカーに出合った。

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