そんなある日、途方に暮れて街でお酒を飲んでいた私に、同級生の友人が言いました。

 「会社は経営者の器以上には大きくならない。おまえの会社がうまくいかないのは、おまえの器が小さいからだ。だから、経営の勉強をしろ」

 そこで私は、わらをもつかむ思いで尋ねました。

 「じゃあ、経営の勉強というのは、どうやるものなのか?」

 そこでいくつかのセミナーや勉強会を紹介してもらったのが、私の経営者としての本当のスタートだったかもしれません。

 ドラッカー教授の著作の読書会に初めて参加したのは、2006年。最初のうちは、おぼろげにしか理解できませんでした。

 そんななか、我が社に大きな転機が訪れます。

「壊れたレコード」でも諦めない

 08年、燃料費の高騰で経営危機が深刻化しました。

 実は、私は入社直後から一貫して「利用客を増やすために営業を強化しよう。地域住民に『もっとバスに乗ってください』と呼びかけよう」と言い続けていました。

 それに対する彼らの反応は、次のフレーズの繰り返し。「嫌だ」「無駄だ」「無理だ」――。まるで壊れたレコードです。決して首を縦に振りませんでした。

 今思えば、そんな社員を責めるのも酷でした。業界全体が何十年も右肩下がりのなかで「利用客を増やそう」と言われても、無謀としか思えなかったでしょう。

 しかし、彼らも、燃料費高騰には並々ならぬ危機感を持っていました。
 そこで私はもう一度、「営業をして利用客を増やそう」と呼びかけた。
 するとついに「分かりました。やりましょう」と社員たちが答えてくれたのです。

 ここまでに実に10年の月日が必要でした。もしこの10年間のどこかで私が諦め、「営業強化」と連呼するのをやめていたら、燃料費高騰の危機があっても、誰も「やろう」とは言ってくれなかったでしょう。すぐ相手の心に届かなくても、言い続けることに意味がある。そう実感しました。