客室料金が安すぎて同業者に怒られた

 創業者の西田氏が打ち出した1号店の客室料金は、シングル1泊4500円(税別)。この価格設定にしたのは、「安くすれば泊まってくれる」という戦略ではなかった。

 西田氏は電気工事が本業で、ホテル経営に関しては門外漢。ホテルの宿泊料金がどうやって決められているのかを知らなかった。だから単純に電気工事の見積もりと同じ、積み上げ方式で算出した。ビルの持ち主である友人に支払う家賃と水道光熱費、リネン費、人件費の見込み額を足して、それに利益を乗せ、平均稼働率を60%として1部屋いくらかを割り出した。

 それが4500円という客室料金の根拠だ。これで売り上げに対して2割くらいの利益が出る。

 ただ「あまりに安すぎる」と、電気工事の得意先でもあった周辺の旅館組合から反発され、やむなく5800円(税別)に引き上げた。それでも破格に安かったので宿泊客が押し寄せ、店舗を増やしていった。

 従来、ホテルの客室料金はコストから逆算してはじき出したものではなく、「このくらいならお客が払うだろう」という考えが先に立ったり、近隣の相場に合わせたりして決められていた。

 逆転の発想が東横インの斬新さだった。また東横インの価格戦略の根底には、いつの時代も「ビジネスマンの味方」「生活必需品でありたい」という思いがある。

 当初の5800円(税別)という価格設定には、「ビジネスマンが会社から支給される出張旅費内で泊まれる上に、近くの居酒屋でビールの1杯も飲めるくらいの金額にしたい」という発想があった。

 ホテルの中身については、西田氏自身が宿泊客としてあちこち泊まる中で不満に思った点を改善し、自分自身が泊まって心地よい、満足できるレベルを目指した。

 まず自分は客で泊まったときに客室料金以外のお金を払うのは嫌だ、ベッドも大きいほうがリラックスできる。そうした考えから、シングルの部屋に大型ベッド(ダブルサイズ)を入れ、洗面用具やドライヤーなどのアメニティーを各室に設置。無料で使えるようにした。

 また、各客室にエアコンを設置した。いずれも、当時のビジネスホテルとしては画期的なことだった。