「あなたは天下取りという、1日に千里を走る虎の背に乗っているのです。乗った以上、途中で下りることはできません。もし途中で下りれば、たちまちその虎に食い殺されますよ」

 大事を起こして立ち上がった以上、途中でやめては自ら滅びてしまう。私も数多くの経営者も、もう虎から下りるわけにはいかないのです。

人間の生き方を実践するのが経営

「経営」という言葉はもともと仏教用語です。禅寺に行けば分かります。座禅を組んでいるときに警策で肩をたたかれ「しっかり経営しなさい」と言われます。

 経営とは、経(きょう、人生の奥義)を営むことです。お経はお釈迦さんがいかに生きるべきか、人間の生きざまを説いたもの。人間の生き方を実践するのが経営で、経を営む者が企業経営者なのです。

タビオでは2009年から靴下を編む糸の材料である綿の研究のため、奈良県広陵町で綿花の栽培に取り組む。毎年、綿花摘み大会を実施し、越智会長も参加する
タビオでは2009年から靴下を編む糸の材料である綿の研究のため、奈良県広陵町で綿花の栽培に取り組む。毎年、綿花摘み大会を実施し、越智会長も参加する

 実際、今、大学で教えている経営学なんて、こう言ったら気の毒だけど、ほとんど意味をなさないと思います。

 その昔、「経営学ぐらい勉強せないかん」と前の専務に促されて、箱根で開かれた4泊5日の経営の勉強会に参加したときのことです。その会場まで友達が僕を訪ねて来て、「越智さん、昨日うちは不渡りを出した。もうどうしていいか分からない」と泣き出した。

 それを聞いた僕は「あんたは運がいい。ちょうど講師の大学教授がいる。昼ご飯の時間だから一緒に相談に行こう」と、先生のところに連れていきました。そして「友達が昨日、不渡りを出したんです。どうしたらいいでしょうか」と聞いたのです。すると、教授は驚いたことに「それは私の専門と違います」と答えた。

 僕は怒ったよ。「経営と倒産は一体のものでしょう。相手は斬るが、受け身や防御を知らない剣術などありますか。創業した会社の97%が倒産して、わずか3%しか生き残れないと、さっき言いよったやないですか。それが倒産や不渡りという非常事態を専門外だと言う学問が存在しますのか」と言うたった。

 僕は、こんなところにおっても無駄やとすぐに帰り、友達の件をちゃんと処理しましたよ。

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